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甑島のトシドン
2009年にユネスコの無形文化遺産に登録された鹿児島県薩摩河内市甑島のトシドンは来訪神、歳神として地域の伝統を守り伝えられています。
トシドンとは
鹿児島県薩摩河内市甑島に伝わるトシドンは、鬼の姿をしていて首なし馬に乗り、毎年大晦日の夜になると山の上に降りてきて家々を廻り、子供の悪さを懲らしめて善い行いを誉め、歳餅を与えて去っていく行事です。
トシドンの歴史
記録が残っていないので詳細は分かりませんが、明治時代以前から子弟教育の一環として江戸時代から行われていると言われ、その内容は口承で伝えられ、神聖な行事として一般的に公開されることはほとんどありませんでした。
トシドンの詳細
大晦日の夜に地元の青年が数体の鬼の姿のトシドンに扮して首なし馬に乗り、子供の居る家を周り、家に上がり込んで、子供がこの一年間に行った悪行を戒め、そして善行を誉め、説教した後に子供に歳餅を与えて、来年にトシドンが来るまで行儀よくする事を約束させて立ち去るという流れになります。
3、4歳または7、8歳の子供が居る家が対象になり、適齢になるまで5年間毎年訪れるしきたりであり、年末の寒くて薄暗い中での突然のトシドンの来訪に子供は恐れおののきます。
トシドンの行われている地区
かつては上甑島、中甑島、下甑島と種子島、屋久島でもトシドンが行われていましたが、今でも行われているのは下甑島のみとなりました。
最盛期のトシドン
1955年頃には各地区ごとに20軒近くの家をトシドンが訪れていたそうで、この頃が最盛期であり、以後は減少の一途をたどっています。
今後のトシドン
人口の都市部への流出現象は特に離島で著しく、少子化と過疎化の問題は島で暮らす人達の希望を無くし、生活の困窮に直面している中で、伝えられてきた伝統さえも存続の危機に面しているのです。
ユネスコの無形文化遺産登録の意義
島という閉鎖的な環境の中で外部の者を受け入れることなく守ってきた伝統も、このままでは間違いなく無くなってしまうことに危機感を感じ、伝統を残すためには公開することも必要だという意識がそうさせたと思います。
島に暮らす人の高齢化が進み、子供が居なくなっている現実と、トシドン役の者さえ居ないという現実は島の将来さえも無くしてしまうことなのです。
また子供が居る家でも宗教上の理由から来訪を拒否したり、付き合いを拒否したりする者が居ると言う現実もあるのです。
トシドンの意味とは
トシドンは子供に対しての勧善懲悪の教育の目的や、自然や神仏、祖先に対する畏敬の念を持つ、地域で子供の成長を見守るなどの意味があり、私達が古くから受け継いできた日本人としての魂を感じる行事でもあります。
私達はいつも同じ場所で暮らしていますと日本の良さに気付くことがありませんが、外国に行ったり他の国の人と話をすると意外と素晴らしい伝統や文化があることに初めて気が付くものなのです。
日本ではお正月に歳神様をお迎えする行事を皆が行っているのも関わらず、形だけで済ませてしまって、中身がまるで分らない、これではいずれ正月にしても単なるバカ騒ぎのお祭りになってしまいます。
今一度見直さないといけない時に来ているのです。