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直葬とは
直葬とは亡き人の通夜や告別式などの葬儀を行わずに病院から直接火葬場に行って火葬する方法です。
直葬の理由
通夜や告別式などの葬儀は亡き人を弔う儀式として宗教に関係なく行われ、忌引きや慶弔見舞金の支給などで、社会全体から手厚く支援されている行事です。
葬儀は亡き人に最後のお別れをして感謝の気持ちを手向けるということと、遺族の深い悲しみを分かち合うということ、そして亡き人をあの世にお送りするという側面があるのです。
そういった大切な役割のある葬儀を行わない直葬が最近増えてきましたが、実際には様々な理由があります。
葬儀のお金が無い
亡き人が借金を残して亡くなったので葬儀に使うお金が無い、葬儀の費用を残してくれていなかった、生活保護を受けていたなどの理由で葬儀のお金が無い場合に、極力安い費用で弔いたいという時に直葬が利用されます。
亡き人の価値観
亡き人の遺言で直葬を指定する人がおられます。
葬儀に対しての価値観を認めない、財産は全額福祉に寄贈する、お金を使うのであれば別のことに使って欲しいなどの明確な意思がある人で、予め遺言状に明確に記載しているような方です。
遺族の判断で
決してお金が無い訳ではないけれど、亡き人が世の中に対して迷惑ばかりかけていたからとか、亡き人の性格からして人を呼ぶような葬儀がふさわしくないと判断される場合に直葬が利用されます。
友人や親戚が居ない
ほとんど人付き合いの無い人だったから、或いは一人暮らしが長かったから、親戚が居ない、都会暮らしが長かったから、呼ぶべき人が居ないという場合には、葬儀をしても人が来ませんので直葬が利用されます。
葬儀は義務ではない
誰かが亡くなったらまずはお葬式の段取りをと誰もが思うもので、それほどお葬式というものは必ずするものと思いがちですが、じつは葬儀は義務ではありません。
葬儀というものは世の中の慣習として行われているもので、亡き人にお世話になっていたような方でしたら、最後のお別れには何事があっても駆けつけるのが人情というものです。
しかし今の世の中、後継者が居ない、夫婦だけで暮らしている、お一人様として暮らしているなどで、万一亡くなってもお葬式をするお金が無い、あるいは呼ぶ人が居ないからお葬式をしないという方が急増しているのです。
お葬式は絶対にしないといけないという決まりはありませんし、お葬式をしなくても火葬は利用出来ます。
直葬の歴史
旧石器時代から死者を送る儀式が行われていましたが、その目的は死者の霊がこの世に出てきて悪さをしないようにということであったのです。
平安時代の終わりに製作された餓鬼草紙には私達が輪廻転生する六道に於ける餓鬼の世界の様子が描かれていますが、墓場に居る餓鬼が描かれた部分には埋葬されて供養塔が作られた墓もあれば、棺に入れられた死体や打ち捨てられたような死体もあることから、葬儀が出来て埋葬される人は身分の高い人であったと思われます。
「餓鬼草紙」
江戸時代になって寺請制度が始まると全ての人がいずれかの寺院に登録されて、亡くなった時の葬儀は仏式で行うようになりましたが、たとえ身分の低い人でも葬儀をすることが出来たそうです。
明治時代までは土葬が主流で葬儀の後に土葬されていましたが、明治時代は約3割の割合で火葬が普及していて、明治以後は昭和の初期にかけて急速に火葬が普及していきます。
土葬の時には「野辺の送り」と言われていた葬儀の方法が火葬の普及と共に大きく変わってきて、仏式のみであった葬儀に様々な宗教形式や新しい考え方が加わり、人々の生活も洋風化していく中で葬儀を行わないという選択肢が生まれたものと思われます。
現代では人口の減少や少子高齢化が加速することによって葬儀不要の直葬は今後益々増えていくことでしょう。
直葬のメリット
通夜や告別式をしない直葬のメリットは何と言っても料金が安いことで、一昔前までは直葬が利益に繋がらないという理由で葬儀社は直葬を取り扱う事をしませんでしたが、直葬の需要が増えていく中で、今では積極的に宣伝するようになっています。
明らかに直葬が増えてきたのは2000年頃からで、墓じまいの問題と同じく、人口の減少や少子高齢化の現象が確実に進行していることと深く関連しています。
直葬の費用の平均が18万円であり、日本消費者協会による2017年での全国平均の葬儀の金額が195万円であることからすれば、直葬は一般的な葬儀費用の1/10を切る費用になります。
葬儀をしないからと言っても棺桶や遺体搬送車の手配、火葬費用などが掛かりますので最小限度の費用は当然発生します。
また直葬では葬儀をしないので、人の応対に時間をとられることが無く、ある意味故人とのお別れの時間がゆっくり取れるのもメリットです。
直葬のデメリット
お葬式というものは亡き人をあの世に迷わないようにお送りするという明確な目的がありますので、葬儀をしなかった場合には、亡き人が迷わずにあの世にたどり着いただろうかという不安を感じる人もおられます。
亡き人の強い信念であり、直葬にしてくれと遺言していたのならそれに従うことがある意味故人の成仏でありますが、どうしようかと迷った結果に直葬を選んだのであれば後悔するかもしれません。
直葬を選択した場合、後になって故人のためにもっと何かしてあげれば良かったと思う方がおられるのは事実ですが、そういった気持ちを持ったままで過ごすことは精神衛生上よろしくありません。
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自分で直葬を準備する
火葬は死後24時間以上経過していることが絶対条件です(新型コロナで亡くなった方は例外として24時間以内に火葬されます)
直葬は葬儀社に頼まなくても全て自分で行うことは可能です、亡き人の遺体を自家用車で火葬場まで運んでも法的には全く問題ありませんし、火葬許可証などの役所の手続きも自分で出来ます。
今時ほとんどの方が病院で亡くなりますが、病院が紹介する葬儀社をそのまま頼むと、一般的に高い傾向があります。
自分で直葬するための手順は、まず死亡届と死亡診断書を役所に提出して火葬許可証をもらい、火葬場を手配しながら亡き人の遺体を運ぶ手配をして、亡き人のための棺桶や骨壺、ドライアイスなどを手配します。
火葬許可証
- 病院で医師から死亡診断書を受け取ります
- 死亡診断書に付属している死亡届に必要事項を記入して認印を押印します
- 死亡届と死亡診断書を市区町村の役所に提出
- 火葬許可証を受け取る
届出の役所
届出が出来る役所は下のいずれかとなります
- 死亡地
- 死亡者の本籍地
- 届出人の住所地
火葬場の手配
火葬場の手配は一番最初に行います、ほとんどの火葬場の手配は葬儀社が行いますので、個人の単位では話が通らないかもしれませんので、まずは電話をして、場合によっては直接申込みに行きます。
火葬場には公営と民営があって使用料金は一般的に公営の方が安いですが、自治体によって違いがあります。
火葬場は個人の住民票のある地域の火葬場を利用するのが基本で、それ以外の地域の火葬場の利用も可能ですが、料金が割り増しになります。
但し火葬場によっては葬儀社以外の個人の単位では受け付けてくれない所があることや、火葬場が混み合っていて予約がずいぶん先になった場合などには、有料になりますが火葬場で遺体を預かってもらうという方法もあります。
準備する物
亡き人のために準備する物としては
- 棺桶2万円程度(葬儀社に譲ってもらうか、通販でも買う事が出来ます)
- 骨壺1万円程度(関東では7寸、関西では5寸程度、分骨する場合には2.5寸か3寸程度、通販で買えます)
- ドライアイス3千円~5千円程度(ドライアイス、販売で検索)
- 棺桶ごと載せられる車(レンタカーでも可)
直葬を葬儀社に頼む
直葬を葬儀社に頼む場合には、葬儀社によって当然料金が違いますので比較した方が賢いと思います。
火葬の手配や遺体の搬送などは意外と面倒ですし、火葬場の予約が一杯だったりすると焦りますので、手数料は取られますが葬儀社に頼んだ方が経験豊富で安心して任せられるかもしれません。
一昔前までは利益が少ないことから直葬を扱っていないか、してもボッタクリということがありましたが、最近では需要が増えていることから葬儀社としても特別格安メニューとして扱っていることが多いですので、よく内容を確認してから利用しましょう。
直葬は善か悪か
今の時代、直葬もまた一つの価値観として定着していることから、「余計な事は一切しない」ということもまた釈迦の説く真理に叶っているのかもしれません。
しかし釈迦のように悟った人の話であって、私達は中々そのレベルにまで到達できないのです。
お金を節約するためだけの目的であったり、嫌な人だから早く安く済ませようという考えではいけません。
亡き人を送って、そして自らも送られてということを延々と繰り返してきて今の私達があるのですから、参列者を呼ぶことが無くても「送る」という葬儀の要素だけはしておかないと後々後悔することになるのです。
私でよろしければ火葬場の炉前の読経にお伺いいたしますのでお呼び下さいませ。
やすらか庵…供養と葬儀
送るということをしてさえいれば、亡き人が迷ったかもしれないという不安を抱かなくて済むのです。