火葬とは
火葬とは亡くなった人の葬送の手段として遺体を火で焼くことです。
火葬の歴史
縄文時代の遺跡からも火葬の遺骨が出土することから、古くから行われていた方法であり、文献上に残るものとしては、文武天皇4年(700)に火葬された僧道昭であり、火葬は仏教の思想にも深く影響していすます。
火で死体を焼く火葬に関しては屋外で焼却する場合には長時間に亘って大量の薪が必要なために、裕福な人でないと出来ない方法でありました。
火葬のメリット
火葬には次のようなメリットがあります。
- 短時間で遺体を遺骨にすることが出来る
- 遺体の容量が減る
- 遺体が腐敗する心配が無い
- 伝染病の拡散の心配が無い
- 土葬に比べて地下水の汚染の心配が無い
- 遺骨を骨壺に納めて持ち帰ることが出来る
火葬のデメリット
火葬には次のようなデメリットがあります。
- 大量の燃料を消費する
- 土葬に比べて金銭的余裕のある人しか出来ない
- 原始的な火葬では臭いや煙が出る
- 宗教の教義によっては利用できないことがある
世界の国の火葬率
2018年に発行されたイギリス火葬協会の資料によれば、主な国の火葬率は
- イタリア…23.90%
- フランス…39.51%
- アメリカ…51.55%
- ドイツ…62.00%
- イギリス…77.05%
とっなており、因みに日本の火葬の普及率は99.97%で極めて高いことが分かります。
イタリアとフランスの火葬の普及率が低いのは、死後の復活を説くカトリックが火葬禁止令を度々出した影響が大きいものと思われます。
我が国の火葬率
我が国では都市部での土地の有効利用の観点から、広い土地が必要な土葬が廃止されて火葬場の建設が進み、火葬費用の一部行政負担などを通じて火葬の普及が飛躍的に進みました。
都市部では葬送の簡略化が進み、葬送にかける時間が減っていることにも関連しています。
火葬は短時間の内に遺体の処理が出来るということがとても都合が良かったのです。
しかし日本の火葬の普及率は99.97%で完全に100%ではありません。
ごく一部ですが長野県の山間部や離島の一部で土葬が認められているためで、交通の事情などから火葬場が利用出来ない地域が存在するためです。
日本在住のイスラム教徒は教義で遺体の土葬を禁じていますので、我が国在住のイスラム教の方が亡くなった場合には大変に困るということになり、山梨県甲州市塩山にある曹洞宗の文殊院では、先住職の代からの善意によって、墓地の一角をムスリム霊園として開放しているそうですが、区画の確保が年々困難になっているそうです。
火葬と納骨
我が国では火葬した後に残った遺骨を持ち帰り、四十九日を過ぎたらお墓に納骨という仕組みが社会の中で完全に出来上がったことで、誰かが亡くなったらお墓が必要である、更には家と墓は絶対に必要だという考えが定着しています。
つまり生きている人のための家と亡くなった人のための家の両方が必要だという考えなのです。
この考えは国と社会が発展し続けている限りは、子孫が繁栄して皆が豊かになるということで皆が同じように共有していたのですが、今の時代は人口が減って若い人が減り、高齢者が増えるばかりの社会になっていますので、後継者が居ないということが問題になっていて、お墓も後継者が居なければ墓じまいするしかないのです。
しかも近年のお墓はお墓の地下にあるカロートと言われる石室の中に骨壺に納められた焼骨を安置しているだけなので、千年経ってもそのままであり続けるのです。
天皇家を除いて私達の家系はいずれ絶えていく運命にあるのですから、今あるお墓の全てが何時かは無縁仏になることが確実なのですから、お墓という仕組みのあり方を考えなければいけません。