豚もおだてりゃ木に登る
「豚もおだてりゃ木に登る」とは「能力の低い者でも、おだてられて気を良くすれば、能力以上のことが出来ることもある」というたとえです。
ことわざの由来
「豚もおだてりゃ木に登る」の起源は古いものではなくて、比較的新しく、昭和20年~30年に会津地方で言われていたのが始まりだそうで、1977年から放送されたテレビアニメのヤッターマンに登場した悪役ドロンボーのコクピットメカの一つ「おだてブタ」が放った台詞「豚もおだてりゃ木に登る」が爆発的に流行して全国に広まったそうです。
そう言えば私も見ていましたが、その時に覚えた印象的なことわざでした。
地方の誰かが考え出した諺なのでしょうけれど、良く出来たことわざだと思います。
豚の理由
「豚もおだてりゃ木に登る」の動物は何故豚なのでしょうか、牛や馬ではダメなのでしょうか。
豚は世界的に見ても愚鈍な動物として捉えられているようで、「豚に真珠」とは豚に高価な真珠を与えても、その価値が分からないというたとえであります。
豚は雑食性で何でも食べてよく太ることから富の象徴とされ、本来は知能が高くて綺麗好きな動物なのですが、野生の猪を人間が改良して家畜化した動物なので、食用として飼育されている以上、あまり知能が高くて高等な賢い動物では都合が悪いでしょうから、ジブリアニメの「千と千尋の神隠し」で主人公の千尋の両親がガツガツと食べ物を食い散らかして豚になってしまうシーンのように、愚鈍なイメージとして定着しているのではないでしょうか。
木に登るブタは凄い!
本来なら豚は木に登る動物ではありませんが、おだてられて調子に乗って木に登ることを「馬鹿な奴だ」と見るか「凄い能力だ」と見るかでことわざの意味が変わってくるのです。
おだてられて調子に乗って木に登るなんて馬鹿なやつ!、と言ってしまえば皆で笑ってそれでおしまい。
おだてられて調子に乗れば木に登るのであれば、もっと上手におだてれば、逆立ちも出来るかもしれませんし、二本足で歩くことも出来るかもしれません。
如何に相手の能力を引き出すかと言うことに於いては、褒めることもおだてることも良い刺激になるのです。
おだて上手
他人に上手く動いてもらおうと思ったら、大げさにおだてることです。
- あんたが一番!
- あんたが大将!
- 格好いいね!
- 凄い!
- 素晴らしい!
- 惚れ惚れする!
言葉は言霊にもなりますから、出来るだけ大きな声で力強く言ってみて下さい、そんなこと言われたら誰でも調子に乗って快く引き受けてくれますし、普段出来ないことも出来るかもしれません。
「不綺語」(ふきご)とは飾り立てた言葉を言わないということで、身(体の行い)、口(口で発する言葉)、意(心で思う事)の規律である仏教の十善戒の中で、口で発する言葉に関する規律の一つです。
綺語は飾り立てた言葉のことですが、お世辞と言った方が分かりやすいかもしれません。
「お世辞」とは「相手に気に入られるために、心にもない誉め言葉を言うこと」です。
心にもない誉め言葉は戒律では悪行になってしまいますが、心の中にある誉め言葉は善行になりますし、この場合には大げさに言っても構いません。
相手を称賛することはとても良い事で、悟りの世界である極楽浄土の住人は相手を称賛する者ばかりです。
私達人間社会ではおだてるということを上手に使えば、人とのコミュニケーションが上手くいくのです。