金剛力士とは

金剛力士とは

金剛力士とは仏教の守護神である天部の一つで、サンスクリット語ではヴァジュラパーニ(Vajrapāṇi)と言い、金剛杵を持つ者という意味で、口を開けた阿形(あぎょう)像と、口を結んだ吽形(うんぎょう)像の2体を一対として寺院の門などに祀られます。

金剛力士の別名は

金剛力士は寺院の入り口を守るという門番のような大切な役目をしていますし、忿怒の顔で意外と大きな仏像ですから、寺院にお参りする時に最初に目にする強烈な印象の仏像ということになります。

金剛力士は寺院の門にお祀りされる時には仁王(におう)または二王として親しまれています。

他には伐折羅陀羅(ばざらだら)、跋闍羅波膩(ばじゃらぱに)、那羅延金剛(ならえんこんごう)、密迹金剛(みっしゃくこんごう)、金剛手(こんごうしゅ)、持金剛(じこんごう)とも呼ばれています。

金剛力士の姿

金剛力士は上半身裸で目を大きく見開き、頭の上には髻(もとどり)を束ねて身には短い裙(くん)を着け、天衣をなびかせている姿が一般的です。

装身具などを付けずに足は裸足で、手、足、上半身共に筋肉や血管まで浮き上がらせるような形相をしているのが特徴です。

持物としては阿形のみ金剛杵を執るか、阿形、吽形共に金剛杵を執ります。

執金剛神

執金剛神

金剛力士が阿形と吽形の二体で造られるのに対して執金剛神は甲冑姿で単独に祀られます。

本来の仏法守護の守護神としての役割を強調した姿が甲冑を着て武器を持った姿になります。

持物は独鈷杵を持っています。

阿形と吽形

金剛力士は口を開けた阿形(あぎょう)像と、口を結んだ吽形(うんぎょう)像の2体を一対としていますが、五十音では「阿」が最初の言葉であり人が生まれて来る時には「阿」の声を出して息を吸い始め、「吽」は最後の言葉であり人が死ぬ時には「吽」の声を出しながら息を吐ききって命を終えるそうです。

寺院に参拝する時には人生の最初の「阿」と最後の「吽」の金剛力士の間を必ず通ることになりますが、生と死の間をくぐることにより命を強くするという信仰の表れなのです。

仁王信仰

どちらかと言えば金剛力士よりも仁王様という方がより庶民的な呼び方ですが、仁王様は寺院の門のよく目立つところにお祀りされていますので庶民的な信仰が盛んで

  • 紙礫(かみつぶて)を自分の患部と同じ所に投げて当たれば治る
  • 草履を奉納すれば足が強くなる

などの庶民的な守り神でもあります。

金剛力士の真言

金剛力士の真言は少し長いですが、口が大きく開いた方が阿形で、その真言は

「ナマサマンダバ・サラナン・トラダリセイ・マカロシヤナキャナセサルバダタアギャタネン・クロソワカ」

口を閉じた方が吽形で、その真言は

「ナマサマンダバ・サラナン・ケイアビモキャ・マカハラセンダキャナヤキンジラヤ・サマセ・サマセ・マナサンマラ・ソワカ」