栃木県の弘法大師伝説
弘法大師空海が生涯の活躍を通して六十二歳で高野山奥の院に入定されるまでの間に日本全国を巡っていた形跡が数多く残っていて、自らの行として、仏法興隆のため、造寺建立のため、民衆救済のためにと全国を廻っていたその業績は膨大な数の伝説となり今でも地方に伝わっています。
真偽の程が定かではない話もたくさんありますが、弘法大師空海が偉大なる存在として全国に知れ渡り、ある意味神的な存在として崇拝されていることでもあるのです。
栃木県に残る弘法大師空海の伝説をご紹介致します。
水に関する伝説
*「塩原温泉」…栃木県那須塩原市の伝承。「水」
承和9年(842)、弘法大師空海が巡錫で当地を訪れた際、塩原温泉に入湯した。
*「独鈷沢」…栃木県那日光市下三依の伝承。「水」
弘法大師空海が巡錫で当地を訪れた際に村人に一杯の水を所望したところ、水場が無く、難儀していたにも関わらず水を汲みに行ったことに感謝して独鈷を突き立てると、その先から滾々と清水が湧き出た。
*「弘法水」…栃木県栃木市大森町の伝承。「水」
弘法大師空海が巡錫で当地を訪れた際に村人に一杯の水を所望したところ、老婆は山を一つ越した谷から水を汲み弘法大師空海をもてなした。弘法大師空海は感謝の意から錫杖を岩の根本に突き刺し法術を施すとそこから滾々と清水が湧きだした。
*「洗水池跡」…栃木県鹿沼市の伝承。「水」
弘法大師空海が当地で修行していた時に、この池の中に入って沐浴した。
*「お助け水」…栃木県鹿沼市の伝承。「水」
弘法大師空海が巡錫で当地を訪れた際に村人に一杯の水を所望したところ、老婆は険しい谷川まで下って水を汲み弘法大師空海をもてなした。弘法大師空海は感謝の意から法術を施すとそこから滾々と清水が湧きだした。
造寺、仏像に関する伝説
*「金乗院」…栃木県那須塩原市の伝承。「造寺、仏像」
大同元年(806)、弘法大師空海が巡錫で訪れた際、霊夢で地蔵尊が出現したため開山。
*「天狗岩」…栃木県那須塩原市の伝承。「岩石」
弘法大師空海が巡錫でこの道を通過しようとしていた時に、天狗が火を放って行く手を阻んだ為、弘法大師空海は法術で大岩を浮遊させ楯として利用した。
*「大谷寺」…栃木県宇都宮市大谷町の伝承。「造寺、仏像」
弘仁元年(810)、弘法大師空海が巡錫で当地を訪れた際、この洞窟に千手観世音菩薩像を一晩で彫刻し、大谷寺を開山した。
*「寂光の滝」…栃木県日光市の伝承。「造寺、仏像」
弘法大師空海は寂光寺(現在の若子神社)を開山し、寂光の滝で修行した。
*「清滝寺」…栃木県日光市清滝の伝承。「造寺、仏像」
弘仁11年(820)、弘法大師空海が巡錫で役小角と雲遍上人縁の社を訪れた時に、社殿背後にある滝が天竺大鷲山から流れ落ちる清滝に似ていた事から清滝と名付けて、本尊千手観音を彫刻し別当寺院となる清滝寺を開山した。
*「滝尾神社」…栃木県日光市山内の伝承。「造寺、仏像」
弘仁11年(820)、空海が女峰山に滝尾権現(田心姫命)を勧請したのが始まり。
*「輪王子」…栃木県日光市の伝承。「造寺、仏像」
弘仁11年(820)、弘法大師空海が入山した。
*「長清寺」…栃木県栃木市本町の伝承。「造寺、仏像」
弘法大師空海が巡錫で当地を訪れた際に村人に一杯の水を所望したところ、水場が無く、難儀していたにも関わらず水を汲みに行ったことに感謝して独鈷を突き立てると、その先から滾々と清水が湧き出た畔に庵を設けた。
*「満願寺」…栃木県栃木市の伝承。「造寺、仏像」
弘仁11年(820)、弘法大師空海が勝道上人の旧跡である当寺を訪れ、千手観世音菩薩を自ら彫刻し安置した。
*「医王寺」…栃木県鹿沼市北半田の伝承。「造寺、仏像」
大同4年(809)、弘法大師空海が巡錫で医王寺を訪れた際、御影像と不動明王像を自ら彫刻し鎮護国家の道場として整備した。
*「厳島神社」…栃木県足利市名草の伝承。「造寺、仏像」
弘法大師空海が巡錫で当地を訪れた時に、弁財天の化身と思われる白い大蛇に導かれて、現在の名草巨石群に辿り着き、そこで弁財天を勧請し厳島神社を創建した。
*「浄因寺」…栃木県足利市の伝承。「造寺、仏像」
弘法大師空海は行基菩薩が開いた浄因寺の法灯を絶やさぬように尽力した。
*「般若寺跡」…栃木県芳賀町の伝承。「造寺、仏像」
弘仁11年(820)、弘法大師空海が巡錫で当地を訪れた時に開創した。
*「西明寺」…栃木県益子町益子の伝承。「造寺、仏像」
延暦元年(782)に弘法大師空海は行基菩薩が開山した西明寺を再興した。真言宗の興隆により時宗の僧侶達は空海を岩窟に押し込めたが、弘法大師空海は法術を施した独鈷の力により脱出した事から山号を独鈷山に改めた。
*「観音寺」…栃木県益子町の伝承。「造寺、仏像」
弘法大師空海が巡錫で当地を訪れた時に如意輪観世音を奉安し寺号を如意山に改めた。
岩石に関する伝説
*「大師の硯石」…栃木県鹿沼市の伝承。「岩石」
弘法大師空海が硯として利用した石。
*「姥母石」…栃木県鹿沼市の伝承。「岩石」
弘法大師空海が当地に訪れた時に、叔母孝行の子供の懇願により大岩の頂部に十六羅漢を彫刻して、その上で護摩祈祷を行った。