十重禁戒とは
十重禁戒とは出家、在家の菩薩が守るべき十種の戒のことで、これを犯すと菩薩の資格が失われ、教団から追放される罪のことで、天台宗、浄土宗、曹洞宗で重んじられています。
十重禁戒の由来
十重禁戒はパーリ語で書かれた初期の仏典であるパーリ仏典経蔵長部に収録された第一経である梵網経(ぼんもうきょう)を典拠としていますが、十重禁戒という言葉ではなくて「十重波羅提木叉」(じゅうじゅうはらだいもくしゃ)として紹介されている戒です。
十重禁戒の内容
- 殺戒…生き物を殺さない
- 盗戒…盗みをしない
- 婬戒…出家者は性交渉、在家は不倫をしない
- 妄語戒…嘘を言わない
- 酤酒戒…酒を売らない、買わない
- 説四衆過戒…菩薩、比丘、比丘尼の犯した罪を吹聴しない
- 自讚毀他戒…自分を誉めて他人をけなさない
- 慳惜加毀戒…人に与えることを惜しまない
- 瞋心不受悔戒…他の謝罪を受け入れ、怒りの心で許さないことをしない
- 謗三宝戒…仏・法・僧の三宝をそしらない
十重禁戒の特徴
十重禁戒は犯すと教団から追放される程の大罪ですが、分かりにくい戒があり、その解釈に悩みます。
酤酒戒
酤酒戒(こしゅかい)とは酒を売ったり買ったりしないという戒です。
古代より酒は人類に利用されてきた歴史があり、薬用的効果も高い酒が仏教では禁止されるのは、正しい判断が出来なくなることや、度が過ぎると争いなどの間違いを犯しやすいからなのです。
在家の人達が酒を売ったり買ったりすることは罪ではありませんが、出家して戒律を受けて戒名を名乗り、修行中の菩薩が売り買いをするのはもちろんのこと、他の者を使って売り買いすることを禁じているのです。
説四衆過戒
説四衆過戒(せつししゅうかかい)とは菩薩、比丘、比丘尼の犯した罪を吹聴しないという戒です。
たとえ修行中の菩薩の身であっても戒をくぐり抜けて悪事を働いたり、他の菩薩を貶(おとし)めるために犯した罪を吹聴して回ったりすることがある訳で、菩薩の身としては人を貶める事なく、慈悲の心で接しなさいと説くのです。
我が国でも寺院の僧侶が悪事を働いていることが多いですが、悪事を働く本人はもちろんのこと、吹聴して回ることも重大な罪になるのです。
何が言いたいかと言えば、悪事を吹聴している暇があるのなら、しっかりと修行しなさいよ、ということなのです。