消えゆくマッチ

マッチの火の写真

人類の歴史が始まって以来、煮炊きや暖房、灯りを取るのに必要な火を起こすという意味での苦労から解放された画期的な発明であるマッチが誕生したのが1827年のことで、以来200年に亘って世界中で使われ続けていますが、現在我が国では電気、ガス機器の普及によって、マッチを使って火を起こすような機会がほとんど無くなってしまいました。

マッチの普及以前

どんど焼き

マッチの普及以前の火起こしの方法としては火打ち石を使った方法と木の棒をこすり合わせた摩擦熱を使った方法の二種類の方法がありました。

そして一度起こした火種は灰を掛けたりして保存しておくことで何時でも火が利用出来るようにしていたのです。

火打ち石による火起こし

火打箱のイラスト

江戸時代から大正時代末期まで一般家庭で行われていた火おこしの方法は火打石によるもので、火打箱と呼ばれる箱がどの家庭にも必ず常備されていました。

火打箱と呼ばれる箱の中には

  • 火打石…石英、メノウなどの硬い石
  • 火打鎌…石をこすりつけて火花を飛ばすための鉄
  • 火口…火花を受けて種火となる消し炭、蒲の穂、もぐさなどのよく乾燥したもの
  • 付け木…種火を炎にするための薄い木片に硫黄を付けたもの
  • 火打箱…箱の中で火起こしと消火をし、火打ち石などの道具を入れておく箱

家の中で比較的簡単に火を起こすことが出来ることから、台所の煮炊き、風呂を焚くなどの日常的な火起こしから、火鉢の墨、行灯や提灯、煙草などの点火用として火打箱は重宝されていたのです。

しかしながらこの火打箱は火起こしが、より簡単に出来る画期的なマッチの登場と普及により消滅していきますが、今では都会暮らしの人が日常から離れた時間を楽しむためのキャンプ用品として再び注目されているのです。

火打箱が普及する以前にも火打石を使った点火法はありましたが、鉄で作られた火打鎌が必要ですから、鉄の利用の普及と関係してきます。

仕事に出かけたり旅に出かける人に火打ち石を打って送り出すのは、魔を払うためであり、火が清めの役割を持っているからです。

特に火打ち石で打った時に出る火は出来たばかりの火ですし、必要な時に打ち出すことが出来るとても便利な火であり、日蓮宗では法要や儀式の時に火打ち石を使うことがありますが、浄めの意味と厄払いの意味があるのです。

きりを使った火起こし

きりもみ火おこしのイラスト

乾燥した木と木を強く擦り合わせ続けますと熱が生じてだんだんと高温になり、やがて発火します。

強い風が吹き続けますと木の枝同士が擦れて自然発火することは自然界にはよくあることとして知られています。

乾燥した木の上で棒を両手で挟み、両手を擦る様にして廻し続けますと擦れて出来た木の粉に小さな種火が出来ますので、それをもぐさや乾燥した木の葉などに移して息を吹きかけますとやがて発火します。

労力の要る作業になりますが、起こした火で料理をしたり暖を取ったりすることが出来ることを思えば、大変に価値のある作業なのです。

マッチの役割

マッチの写真

昭和の時代までは家庭の台所や仏壇には徳用マッチと言われる大箱のマッチが常備されていました。

1箱にマッチが約800本入っているそうですから一般家庭での使用なら結構長持ちします。

湿気に強い防湿タイプのマッチも普及しました。

料理を作ったりお湯を湧かしたり、灯りや暖を取ったりするのに生活必需品だったマッチは安価なライターの出現によってその役割をだんだん減らしていきます。

マッチの欠点として

  • 湿気により点火しにくくなること
  • 濡れたら使えない
  • 使用済みの軸を捨てる場所が必要
  • 燃える時と消えた後に煙が出る
  • 持ち歩くと箱が潰れたりする

このような欠点を全て解決しているライターは瞬く間に普及し、特に100円ライターと言われる安価なライターは爆発的に普及しました。

それでもマッチは店舗やサービスの広告が入った生活必需品として配られることが多く、紙製のブック型と言われるマッチなどが出てきたことで喫茶店や食堂、ホテルなどに行けばオリジナル図柄の無料マッチが置いてあるので、全国のマッチを集めるマッチコレクターがマッチのコレクションを自慢していたのです。

今でもマッチが売られているのですが、戦前からのメーカーの会社名や箱のデザインにはレトロ感が漂っていて、今の時代の横文字とカタカナで埋め尽くされた製品には無い味わいを持っています。

日本で作られた日本の製品が消えていく運命にある中で、マッチの製造会社には是非とも頑張って欲しいと願うばかりです。

マッチが不要になったら

時代の移り変わりと共に生活様式が変化して、生活必需品の内容は変わっていくものです。

マッチはライターの普及と共に衰退しましたが、そのライターでさえ衰退しているのが現状であり、煙草の点火用としても今の時代は喫煙場所が制限され、近年では電子タバコの出現によってマッチやライターで点火するということさえも無くなっているのです。

マッチが不要になったら燃えるゴミとして処分して構いません。

マッチの処分

ごみとして捨てる

マッチは危険物に該当しませんので可燃ごみとして捨てて構いません。

あまり使うことが無くなりましたが、それでもお墓参りの時には必要になりますし、ロウソクと合わせて非常用として密閉式の袋に入れておけば長期間保存出来ます。

お焚き上げ

やすらか庵のお焚き上げ供養

仏壇に置いてあるマッチは仏様に供えるロウソクや線香の点火用として使われるものですから、仏壇が不要になった時には線香やロウソクなどの仏具と一緒にお焚き上げに出せば供養されます。

高野真言宗やすらか庵では日常の勤行に大量のロウソクや線香、そしてマッチ、ライターを使っていますが、その全てが皆様からの奉納で賄われています。

マッチやライター、ロウソクや線香などは捨ててしまわずに、お焚き上げ品を送る時に「供養品」と書いた袋に入れて下されば、使われることの無かった仏具を供養のために使わせて頂きます。

使いかけの物でも供養のために使わせて頂きます。

最後まで使い切ることも供養なのです。