往生要集とは
平安時代中期の天台宗の僧源信が寛和元年(985)に多くの仏教の経典や論書などから極楽往生に関する部分を集めた仏教書で1部3巻から成ります。
末法の時代がやってくる
国家鎮護の寺としての天台宗の比叡山延暦寺では荘園を貴族や武士の侵入から守るための僧兵といわれる武力集団を持ち、内部抗争が激化したり、東大寺や興福寺など南都の僧とも権力闘争が起きたりなどの物騒な世の中であったからこそ、末法と言われる様相を誰もが感じていたのです。
往生要集の内容
源信が恵心院に隠棲して念仏三昧の日々を送りながらも多くの仏教の経典や論書などを参考に、極楽往生に関する部位を集めた著作としての往生要集は、死後に極楽往生するためには一心に仏を思いながら念仏するしかないことを説く浄土教の基本となる名著で、1部3巻から成ります。
巻上
巻上は地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人間、天人の世界の様子を詳細に表現して穢れた場所であるとし、極楽浄土の証拠を示しながら浄土を求めること、そして念仏の大切さを説きます。
特に地獄の世界の表現は詳細であり、後の文学などに多大なる影響を及ぼします。
- 大文第一 厭離穢土…地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人間、天人の六道の様子
- 大文第二 欣求浄土…極楽浄土に生れる十楽とは
- 大文第三 極楽証拠…極楽往生の証拠について
- 大文第四 正修念仏…浄土往生の道を明らかにする
巻中
巻中では念仏修行の方法と人が亡くなる時に行う念仏の作法を示し、亡くなる時の念仏により極楽浄土に往生出来ることを勧め、貴族階級などで絶大なる支持を得ました。
- 大文第五 助念方法…念仏修行の方法
- 大文第六 別時念仏…臨終の念仏について
巻下
巻下では念仏による功徳を説き、問答によって具体的に念仏の優れていることを説きます。
- 大文第七 念仏利益…念仏による功徳とは
- 大文第八 念仏証拠…念仏による善業とは
- 大文第九 往生諸行…念仏の包容性
- 大文第十 問答料簡…何よりも勝れているのが念仏である