目次

地獄とは

地獄のイラスト

仏教では衆生が住むとされる場所は、須弥山の下部にある鉄囲山に囲まれた四つの州の一つである贍部洲(せんぶしゅう)ですが、その地下には地獄があって、重大な罪を犯した者が死後に輪廻転生する所であり、重大な罪を犯した者が行く世界とされます。

仏教の世界では死後に行ってはいけない低い世界として「三悪趣」と言われる地獄、餓鬼畜生で、その中でも地獄は最下位の世界になります。

死後の世界の裁判官

閻魔大王

私達衆生の死後は7日目から十三仏、或いは十三王と呼ばれる裁判官の裁判を受け始め、不動明王化身である秦広王(しんこうおう)から始まって33回忌の虚空蔵菩薩の化身である法界王( ほうかいおう)まで裁判を受け続けるとされます。

35日を担当する地蔵菩薩の化身である閻魔大王(えんまだいおう)は有名で、十三の裁判官の中でも特に強大な力を持つことから閻魔大王の裁判で今後の行き先が全て決まってしまうとも言われています。

閻魔大王の前には生きている時の行動を全て映し出すと言われる「浄頗梨の」や、生前中の善なる行いと悪なる行いの全てが記載された「閻魔帳」がありますので、生前中の善悪の行いが全て裁判にかけられ、嘘をつくようなことがあっても必ず真実の姿が映し出されるようになっています。

地獄に堕ちる重罪とは

私達の生前の行いは「善行」と「悪行」に分けられて、裁判の結果として秤にかけられて地獄、餓鬼、畜生、阿修羅人間天界のいずれかの行く先が決まりますが、地獄に堕ちるにはそれなりの理由があって、重罪を犯したという理由であり、更にその罪の重さによって地獄の世界も分かれています。

在家の五戒

在家の五戒とは、仏門に入った在家の人が性別を問わず守るべき五つの道徳のことで、五つの戒から成り立ち、最も重要度の高い順から並びます。

  • 不殺生戒(ふせっしょうかい)…生き物を故意に殺してはならない
  • 不偸盗戒(ふちゅうとうかい)…他人のものを盗んではいけない
  • 不邪婬戒(ふじゃいんかい)…不道徳な性行為を行ってはならない
  • 不妄語戒(ふもうごかい)…嘘をついてはいけない
  • 不飲酒戒(ふおんじゅかい)…酒類を飲んではならない

この中で最も罪が重いのは「不殺生戒」であり、それを破るということは、殺生を行ったということであり、生き物の命を奪うということで、直接的に手を出さなくても、間接的に関わっても罪になります。

その次に罪が重いのは「不偸盗戒」ですが、盗みの罪も地獄に堕ちる可能性が高く、繰り返すことや、他の罪との組み合わせで重罪に繋がります。

地獄の世界の詳細

地獄の構造、仕組み

地獄の世界は罪の重さに応じて段階構造になっていて、上から順に等活(とうかつ)地獄、黒縄(こくじょう)地獄、衆合(しゅうごう)地獄、叫喚(きょうかん)地獄、大叫喚(だいきょうかん)地獄、焦熱(しょうねつ)地獄、大焦熱(だいしょうねつ)地獄、阿鼻(あび)地獄がありますが、最下部の阿鼻(あび)地獄は例えようもないぐらいの苦しみの世界です。

等活(とうかつ)地獄

等活地獄は私達の住む閻浮提の下1万5千キロにあって、15万キロの広さがあります。

生前に殺生を行った者が落ちる地獄で、ここに堕ちた者たちは常に相手に対して憎悪を持ち、鉄の爪で相手がボロボロになるまで襲い掛かってついには息絶えてしまいます。

ところが時々涼しい風が吹いてきてまた元通りの体になって再び憎悪の争いを延々と繰り返すのです。

衆人の寿命は500歳で、人間界の50年を第一四天王(四大王衆天)の一日一夜とした場合の500年が等活地獄の一日一夜であり、それが500年にわたって続くので

50×365×500×365×500→1,665,312,500,000

つまり人間界の年月では1兆6653億1250万年もの間苦しみ続けるのです。

等活地獄の四門の外には罪状に応じて更に十六の別地獄があり、「正法念処経」によれば

屎泥処(しでいしょ)

鹿を殺し、鳥を殺した者が堕ちる地獄。

極熱の屎泥があって空腹に耐えかねて食べると苦く、硬いくちばしを持った虫がその中にいて罪人が食べられる。

刀輪処(とうりんしょ)

物を貪って刀を使って殺生をした者が堕ちる地獄。

10由旬の鉄の壁に囲まれており、地上からは猛火、天井から熱鉄の雨が罪人に襲いかかり、樹木から刀の生えた刀林処があり、両刃の剣の雨も降り注ぐ。

瓮熟処(おうじゅくしょ)

動物達を殺して食べた者が堕ちる地獄。

獄卒が罪人を鉄の瓮(かめ)に入れて煎り豆のように煮る。

多苦処(たくしょ)

人を縄で縛ったり、杖で打ったり、断崖絶壁から突き落としたり、子供を恐れさせたり、拷問で人々に大きな苦痛を与えた者が堕ちる地獄。

十千億種類以上の苦しみが用意されており、生前の悪行に応じた形で苦しめられる。

闇冥処(あんみょうしょ)

羊や亀を殺した者が堕ちる地獄。

真っ暗闇で闇火(あんか)や熱風が罪人を焼いて苦しめる。

不喜処(ふきしょ)

法螺貝を吹くなど、大きな音を立てて驚かせたうえで、鳥獣を殺害した者が堕ちる地獄。

昼夜を問わず火炎が燃え盛り、熱炎の嘴の鳥、犬、狐などの獣によって肉や骨の髄まで食われる。

極苦処(ごくくしょ)

腹を立ててすぐに怒り、暴れ回り、物を壊し、勝手気ままに殺生をした者が堕ちる地獄。

常に鉄火で焼かれ、獄卒に生き返らされては険しい断崖絶壁の下に突き落とされることが繰り返される。

黒縄(こくじょう)地獄

等活地獄の下にあって広さは同じ広さで、生前中に盗みを働いた者が堕ちる地獄。

「墨縄」(すみなわ)と言われる大工が板を真っ直ぐに切るための線を描くための道具で縦横に線を引かれて切り刻まれることから黒縄地獄と言います。

体が切り刻まれてもがき苦しむ絶叫の中で体がバラバラになって息絶えても、一陣の風が吹いてくるとまた元の体に戻り、また切り刻まれる苦しみを延々と繰り返します。

黒縄地獄の苦しみは等活地獄の10倍にもなります。

黒縄地獄の四門の外には罪状に応じて更に十六の別地獄があり、「正法念処経」によれば

等喚受苦処(とうかんじゅくしょ)

生前に間違った法を説いた者や、崖から投身自殺した者が堕ちる地獄。

燃える黒縄に縛られて、計り知れないほど高い崖の上から鉄刀が突き出す熱した地面に落とされ、燃える牙を持つ犬に食い殺される。

旃荼処(せんだしょ)

病人が用いるべき薬品を病人でもないのに用いた中毒患者が堕ちる地獄。

烏、鷺、猪などが罪人の眼球や舌をつついて抜き出し、獄卒たちが杵や大斧で罪人を打ち据える。

畏熟処(いじゅくしょ)、畏鷲処(いじゅうしょ)

貪欲のために人を殺し、飲食物を奪って飢え渇かせた者が堕ちる地獄。

鉄の棘が生えた地面を、杖、火炎の鉄刀、弓矢などを持った獄卒に追い回され、休む間もなくいつまでも走らされ、転倒すると金棒で何度も殴られ、水をかけられる。

衆合地獄

黒縄地獄の下にあって広さは等活、黒縄地獄と同じで、殺人や盗み、淫乱の罪を重ねた者が堕ちる地獄。

刃がカミソリで出来たサボテンの木が無数に生えている地獄で、樹上には絶世の美男美女が居て誘うので、淫乱な罪人は気を登ろうとするけれど、鋭いカミソリの刃で体中切り裂かれ、それでも上まで登ったら美男美女は今度は木の下に居るのでまた降りるということを延々と繰り返す地獄です。

衆合地獄の苦しみは黒縄地獄の10倍にもなります。

衆合地獄の四門の外には罪状に応じて更に十六の別地獄があり、「正法念処経」によれば

悪見処(あくけんしょ)

他人の子供に性的虐待を行った者が堕ちる地獄。

自分自身の子供が陰部から串刺しになる様子を見せられる。また己の肛門から熱した銅が注がれ内臓が焼き爛れる苦しみを受ける。

大量受苦悩処(たいりょうじゅくのうしょ)

異常な方法で性行為を行った、またはそれを覗き見して真似した者が堕ちる地獄。

炎の剣で肛門から腰かけて串刺しにされる。男は睾丸、女は卵巣を抜かれる。

割刳処(かっこしょ、かちこしょ)

口を使い、性行為した者が堕ちる地獄。

口に釘を打って頭から貫通させ、それを急に抜き取り、今度は口から耳へ貫いて抜き取り、ということの連続または、溶けた赤銅を口から注ぎ込んで内臓を焼く。

脈脈断処(みゃくみゃくだんしょ)

男性に淫らな性行為を迫った女性が堕ちる地獄。

筒を通して口の中に溶けた銅を流され、「私は今、孤独です」と大声で叫ばされる。

団処(だんしょ)

牛や馬を相手に性行為(獣姦)を行った者が堕ちる地獄。

地獄に牛や馬がおり、罪人が性行為を行おうとすると、その牛馬の炎が性器を通じて罪人の体を焼きつくす。

多苦悩処(たくのうしょ)

男同士で性行為をした者が堕ちる地獄。

生前に愛した男がいて、燃やされているのを見せられ、罪人がそれを抱くと相手の男から発する炎で焼き尽くされる。

忍苦処(にんくしょ)

戦争などで略奪した他人の妻を寝取ったり、それを他人に与えたものが堕ちる地獄。

獄卒たちが罪人を木から逆さ吊りにし、下からの炎で焼き殺すことを繰り返す。

朱誅処(しゅちゅうしょ)

羊やロバを相手に性行為を行った者が堕ちる地獄。

鉄の蟻の大群にたかられ、肉や骨、内臓まで喰われる。

何何奚処(かかけいしょ)

兄弟、姉妹を相手に性行為を行った者が堕ちる地獄。

燃え上がる炎に焼かれ、鉄の烏の大群に食い尽くされる。

涙火出処(るいかしゅっしょ)

禁を犯した尼僧と性行為を行った者が堕ちる地獄。

罪人が流した涙が炎となって当人を焼き、獄卒に毒樹のトゲを目に刺され、鉄のはさみで肛門を裂かれ、そこに溶けた白蝋を流し込まれる。

一切根滅処(いっさいこんめつしょ)

口、肛などの女性器でない場所でその女性と性行為を行った者が堕ちる地獄。

獄卒が罪人の口を鉄叉で広げて熱銅を流し込み、耳に白蝋を流し込み、鉄の蟻が罪人の目を喰い、刀の雨が降る。

無彼岸受苦処(むひがんじゅくしょ)

妻以外の女性と性行為を行った者が堕ちる地獄。

火責め、刀責め、熱灰責め、病苦による責めなど、次から次へと責め苦がやってくる。

鉢頭摩処(はちずましょ)

僧になっても過去に付き合っていた女性を忘れられず、夢の中で関係し、淫欲の功徳を説いた者が堕ちる地獄。

獄卒に瓶の中で煮られ、鉄杵で突かれ、苦しむ罪人が辺りを見回すと、池の中に蓮華が見えるので、そこに行けば救われると思って走り出すと、地面に敷き詰められた鉄鉤に足を引き裂かれ、やっとの思いでたどりつくと背後に控えた獄卒に刀や斧で散々に打たれる。

大鉢頭摩処(だいはちずましょ)

出家僧ではないのに僧であると偽り、しかも戒律に従わなかった者が堕ちる地獄。

広さ500由旬、長さ100由旬の熱した白蝋の河があり、罪人がそこに落ちると身体がバラバラ、骨は石に、肉は泥になってしまい、やがて身体が魚になり鳥についばまれる。

火盆処(かぼんしょ)

出家僧ではないのに僧のフリをして、女性に興味を持ったり、身の回りの生活品に執着し、正法を行わなかった者が堕ちる地獄。

ロウソクのように、罪人たち自身の身体が炎に包まれ燃え盛り、泣き叫ぶたびに口や目鼻から炎が体内に入り、骨まで燃やし尽くす。

鉄末火処(てつまっかしょ)

出家僧だと詐称し、女性の舞いや笑い声、装飾品に心引かれてみだらな想像にふけった者が堕ちる地獄。

500由旬の高さの熱鉄の壁の囲いの中で、炎の熱鉄の雨が降りそそぎ焼かれ続ける。

叫喚地獄

飲酒の罪を犯した者が堕ちる地獄で衆合地獄の下にあり、広さは同じです。

金ばさみで口をこじ開けられ、熱でドロドロに溶けた銅を流し込まれます。

衆合地獄の10倍の苦しみがあります。

叫喚地獄の四門の外には罪状に応じて更に十六の別地獄があり、「正法念処経」によれば

大吼処(だいくしょ)

心身を清める斎戒を行っている人に酒を与えた者が堕ちる地獄。

極卒から溶けた白蝋を無理矢理飲ませられる。

普声処(ふしょうしょ)

修行中に気が緩んで酒を飲んだ者、受戒したばかりの人に酒を飲ませた者が堕ちる地獄。

獄卒に鉄の杵で打たれて苦しめられる。

髪火流処(はっかるしょ)

五戒を守っている人に酒を与えて戒を破らせた者が堕ちる地獄。

熱鉄の犬が罪人の足に噛み付き、鉄のくちばしを持った鷲が頭蓋骨に穴を開けて脳髄を飲み、狐たちが内臓を食い尽くす。

火末虫処(かまつちゅうしょ)

水で薄めた酒を売って大儲けした者たちが堕ちる地獄。

罪人の身体から無数の虫が湧き出し肉や骨を食い破る。

熱鉄火杵処(ねつてっかしょしょ)

鳥や獣に酒を与えて、酔わせた後に捕らえて殺した者が堕ちる地獄。

獄卒が振り下ろす鉄の杵で追い回され、捕まると砂のごとく細かく砕かれる。

雨炎火石処(うえんかせきしょ)

旅人に酒で酔わせて財産を奪った者、象に酒を飲ませて暴れさせ、多くの人々を殺した者などが堕ちる地獄。

赤く焼けて炎を発する石の雨が罪人たちを撃ち殺す。

また、溶けた銅とハンダと血が混ざった河が流れており、罪人たちを押し流しながら焼く。

全身から炎を発して燃え盛る巨大象がいて罪人を押しつぶす。

殺殺処(せつせつしょ)

貞淑な婦人に酒を飲ませて酔わせて関係した者が堕ちる地獄。

獄卒たちが熱鉄の鉤で罪人の男根を引き抜くが、抜かれるたびに再生し、同じことが繰り返される。

罪人が逃げ出すと、今度は烏、鷲、鳶の大群に食い尽くされる。

鉄林曠野処(てつりんこうやしょ)

酒に毒薬を混ぜて人に与えた者が堕ちる地獄。

燃え盛る鉄の車輪に縛り付けられ、回転させたところを的当てのごとく弓で射られる。

普闇処(ふあんしょ)

酒を売る仕事をしながら、人の無知に付け込んで、少しの酒を高価な値段で売った者が堕ちる地獄。

真っ暗闇の中で獄卒に散々に打たれ、その後炎の中で頭から二つに引き裂かれる。

閻魔羅遮曠野処(えんまらこうやしょ)

病人や妊婦に酒を与えて、彼らの財産や飲食物を奪った者が堕ちる地獄。

罪人は足から順に頭まで燃えていき、その上で獄卒に鉄刀で足から順に頭まで切り刺される。

剣林処(けんりんしょ)

荒野を旅する人をだまして泥酔させ、持ち物や命を奪った者が堕ちる地獄。

燃え盛る石の雨、沸騰した血と銅汁と白蝋の河がある中で、獄卒に刀や殻竿で打たれる。

大剣林処(だいけんりんしょ)

人里離れた荒野の街道で酒を売った者が堕ちる地獄。

高さ1由旬の剣樹の林があり、獄卒にそこへ追い立てられる。

剣樹の幹は炎に包まれ、葉は鋭い刃になっており、揺れるたびに無数に落下して下のものを切り裂く。

芭蕉烟林処(ばしょうえんりんしょ)

貞淑な婦人に密かに酒を飲ませていたずらしようとした者が堕ちる地獄。

煙が充満していて前が見えず、床は熱した鉄板になっていて焼かれる。

煙火林処(えんかりんしょ)

悪人に酒を与えて、憎む相手に復讐させた者が堕ちる地獄。

熱風に吹き上げられ、他の罪人と空中でぶつかり合いながら砂のように砕けてしまう。

火雲霧処(かうんむしょ)

他人に酒を飲ませて酔わせ、物笑いにした者たちが堕ちる地獄。

地面から吹き上がる炎の熱風で舞い上げられ、空中で回転し、縄のようにねじれ、ついには消滅してしまう。

分別苦処(ふんべつくしょ)

使用人に酒を与えて勇気付け、動物を殺生させた者が堕ちる地獄。

獄卒が様々な苦しみを与えた上で、説教して反省させる。

大叫喚地獄

嘘をついた罪を犯した者が堕ちる地獄で叫喚地獄の下にあり、広さは同じです。

嘘をついた罪人の舌を、鉄の針で突き刺したり、鉄ばさみで引き抜くといった罰となるが、舌は再び再生して苦しみから逃れることが出来ない。

叫喚地獄の10倍の苦しみがあります。

大叫喚地獄の四門の外には罪状に応じて更に十六の別地獄があり、「正法念処経」によれば

吼吼処(くくしょ/こうこうしょ)

恩を仇で返した者、自分を信頼してくれる友人に対して嘘をついた者が堕ちる地獄。

獄卒が罪人の顎に穴をあけて熱した鉄のはさみで舌を引き出し、毒の泥を塗って焼け爛れたところに毒虫がたかる。

受苦無有数量処(じゅくむうすうりょうしょ)

嘘をでっち上げて、目上の人を陥れた者が堕ちる地獄。

獄卒に打たれて傷つくと、その傷口に草を植えられ、成長し根を張ったところで引き抜かれる。

受堅苦悩不可忍耐処(じゅけんくのうふかにんたいしょ)

保身のために嘘をついた者、または自分の地位を利用して嘘をついた者が堕ちる地獄。

罪人たちの体内の蛇が動き回り、肉や内臓を食い荒らす。

随意圧処(ずいいあつしょ)

他人の田畑を奪い取るために嘘をついた者が堕ちる地獄。

鍛冶師が刀を作るように、罪人を鉄に見立てて火で焼き、ふいごで火力を強め、鉄槌で打たれ、引き延ばされ、瓶の中の湯で固められ、また火で焼く、ということが延々くり返される。

一切闇処(いっさいあんしょ)

婦女を犯して裁判にかけられながら、嘘をついてしらを切り通し、相手の婦女を犯罪者に仕立て上げた者が堕ちる地獄。

頭を裂いて舌を引き出し、それを熱鉄の刀で引き裂き、舌が生えてくるとまた同じ事を繰り返す。

人闇煙処(じんあんえんしょ)

実際は十分に財産があるのに財産がないと嘘をつき、手に入れる資格がないものを皆と一緒に分けて手に入れた者が堕ちる地獄。

獄卒に細かく身体を裂かれ、生き返るとまだ柔らかいうちにまた裂かれ、骨の中に虫が生じて内側から食われる。

如飛虫堕処(にょひちゅうだしょ)

サンガの所有物によって商売を行い、安く買い高く売り、得たものをサンガと共有せず、儲けがなかったと嘘をつく者が堕ちる地獄。

獄卒が罪人を斧で切り裂き、秤で計って、群がる犬達に食わせる。

死活等処(しかつとうしょ)

出家人でもないのにその格好をし、人をだまして強盗を働いた者が堕ちる地獄。

獄卒に苦しめられる罪人たちの前に青蓮華の林が見え、そこに救いを求めて駆け寄ると、炎の中に飛び込み、両目をえぐられ両手足も奪われて抵抗できないまま焼き殺される。

異々転処(いいてんしょ)

優れた陰陽師で正しく占うことができ、世人の信用を得ていながら、占いで嘘をつき、国土や立派な人物を失う原因を作った者が堕ちる地獄。

目の前に父母、妻子、親友などの幻が出現するので、救いを求めて駆け寄ると灼熱の河に落ちて煮られる。

再生して河から出ると、再び同様の幻が出現し、駆け寄ると地面の鉄鉤で切り裂かれ、上下からの回転ノコギリで切り刻まれる。

唐悕望処(とうきぼうしょ)

病気で苦しんだり、生活に困ったりしている人が助けを求めているのに、助けると口先ばかりで嘘をついて、実際には何もしてやらなかった者が堕ちる地獄。

目の前においしそうな料理が出現するので駆け寄ると、途中に生えた鉄鉤で傷つき、しかもたどり着くと実は料理に見えたのは熱鉄や糞尿の池で、その中に落ちて苦しむ。

夜露をしのぐ家を貸すといって貸さなかった者は、深さ50由旬の瓶の中で高熱の鉄汁に逆さまに浸される。

双逼悩処(そうひつのうしょ)

村々の会合などで嘘をついた者、悪口を言って集団の和を乱した者が堕ちる地獄。

炎の牙の獅子がおり、罪人を口の中で何度も噛んで苦しめる。

迭相圧処(てっそうあつしょ)

親兄弟親戚縁者などが争っている中で、自分の身近な者が得するように嘘をついた者が堕ちる地獄。

罪人に騙されたものたちが出現し、罪人の肉をはさみで切り取って口の中で噛んで苦しめる。

金剛嘴烏処(こんごうしうしょ)

病気で苦しむ人に薬を与えると言っておきながら与えなかった者が堕ちる地獄。

金剛のくちばしを持つカラスが罪人の肉を喰う。

火鬘処(かまんしょ)

祝い事の最中に法を犯しておきながら、しらを切った者が堕ちる地獄。

獄卒が鉄板と鉄板の間に罪人を挟み、くり返しこすって血と肉の泥にしてしまう。

受鋒苦処(じゅほうくしょ)

布施しようと言いながら布施しなかった者、布施の内容にケチをつけた者が堕ちる地獄。

獄卒に熱鉄の串で舌と口を刺される。嘘をつくことはおろか泣き叫ぶこともできない。

受無辺苦処(じゅむへんくしょ)

船長でありながら海賊と結託し、船に乗っている商人達の財産を奪った者が落ちる。

熱鉄の金箸で吼々処のように舌を引き抜かれる。

血髄食処(けつずいじきしょ)

王や領主の地位にあって税物を取り立てながら、まだ足りないと嘘をつき多くの税を取った者が堕ちる地獄。

黒縄で縛られて木に逆さづりにされた上、金剛のくちばしのカラスに足を食われる。

十一炎処(じゅういちえんしょ)

王、領主、長者のように人から信頼される立場にありながら、情によって偏った判断を下した者が堕ちる地獄。

10方向から炎が吹き出して罪人を焼き、罪人の体内から11番目の炎が生じて口から吹き出し舌を焼く。

焦熱地獄

殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語に加えて、仏教の教えではない間違った教えを広めた者が堕ちる地獄で大叫喚地獄の下にあり、広さは同じです。

熱した鉄の棒で叩かれたり、口から肛門の出鉄の串で突き通されて地獄の業火であぶり焼かれる。

大叫喚地獄の10倍の苦しみがあります。

焦熱地獄の四門の外には罪状に応じて更に十六の別地獄があり、「正法念処経」によれば

大焼処(だいしょうしょ)

「殺生をすることで天に転生することができる」という邪見を述べた者が堕ちる地獄。

もろもろの火の他に、後悔の炎が生じて内側から罪人を焼き焦がす。

分荼梨迦処(ぶんだりかしょ)

「飢えて死ぬことで天に昇ることができる」と説いた者が堕ちる地獄。

体中から炎が吹き出して苦しんでいる罪人の耳に、「ここには分荼梨迦の池があり、水が飲める」という声が聞こえるが、池に飛び込むとそこは水ではなく炎の中で、さらに苦しむ。

龍旋処(りゅうせんじょ)

「欲、怒り、愚かさを断てば涅槃に入れる、という教えは嘘だ」と説いた者が堕ちる地獄。

身体から毒を発する悪龍がたくさんおり、罪人の周囲で激しく回転し、罪人は毒と回転の摩擦でぼろぼろに砕かれる。

赤銅弥泥魚旋処(しゃくどうみでいぎょせんしょ)

「この世に存在する一切は大自在天の作ったもので、輪廻転生などはない」と説いた者が堕ちる地獄。

高熱の銅汁の海に鉄の魚がおり、溺れる罪人の上半身を噛む。下半身は銅の海で焼かれ、また海中の悪虫に食いつかれる。

鉄鑊処(てっかくしょ)

「たとえ殺人を犯しても、その殺された人が天に生まれ変われば殺人は悪くない」と説いた者が堕ちる地獄。

「平等受苦無力無救」「火常熱沸」「鋸葉水生」「極利刀鬘」「極熱沸水」「多饒悪蛇」という六つの巨大な釜があり、罪人を煮る。

血河漂処(けつがひょうしょ)

何度となく戒に違反しながら「苦行すれば全ての罪は許される」と考え、自らの身体を傷つけるような苦行を行った者が堕ちる地獄。

文字通り血の河に漂う地獄で、河の中に群れ成して住む丸虫が罪人に取り付いて焼き焦がす。

饒骨髄虫処(にょうこつずいちゅうしょ)

今よりも良い世界ではなく、当たり前の人間界に転生することを望んで戒を破り、牛の糞に火をつけて自らの身を焼いた者が堕ちる地獄。

鉄の杵で打たれて蜜蝋のようにどろどろにされ、前世の罪のために虫となって地獄に落ちた者たちと混ぜ合わされて肉の山となり、火をつけて燃やされる。

一切人熟処(いっさいにんじゅくしょ)

邪教を信じ、天界に転生するために山林や草むらなどに放火した者が堕ちる地獄。

罪人の目の前で家族や友人など、かけがえのない人々が焼かれる。

無終没入処(むしゅうぼつにゅうしょ)

「動物や人間を焼き殺したものは火を喜ばせたという理由で幸福を得られる」と考え、実行したものが堕ちる地獄。

燃え盛る巨大な山に登らされ、手、足、頭、腰、眼、脳などに分解されてそれぞれが燃やされる。

大鉢特摩処(だいはちとくましょ)

僧たちに食事を供する大斎の期間中に殺人をすれば望みが叶うと考え、実行した者が堕ちる地獄。

花弁の中に無数の長い棘がある紅蓮華の花の中に落とされ、全身串刺しになる。しかも傷口から炎が吹き出す。

悪険岸処(あくけんがんしょ)

「水死したものは那羅延天に転生し、永遠にその世界に住み続ける」と説いた者が堕ちる地獄。

獄卒たちが「あの大きな山を越えれば苦を受けることはなくなる」と指示に従えば、山の向こうの切り立った崖に落ち、崖下の石の刀に刺さって燃やされる。

金剛骨処(こんごうこつしょ)

「この世にある一切のものは因縁などとは関係なく生じたり滅したりするので、仏法を信じるなどばからしい」と説いた者が堕ちる地獄。

獄卒に刀で肉を削られ骨だけにされるが、この骨は金剛のように硬くなっていて、罪人に騙されたものたちが現れてその骨を手に取り打ち合わせる。

黒鉄縄刀解受苦処(こくてつじょうびょうとうかいじゅくしょ)

「人間の行いの善や悪などはすべて因縁によって決まっており、変えられないのだから、あれこれ頑張ってみても無意味だ」と説いた者が堕ちる地獄。

鉄の綱で縛られ、足から頭にかけて刀で細かく裂かれる。

那迦虫柱悪火受苦処(なかちゅうちゅうあくかじゅくしょ)

「宇宙にはこの世もあの世も存在しない」と説いた者が堕ちる地獄。

罪人の頭を貫通させた大きな釘を、そのまま地面に打ち立て、その後罪人の体内に虫が湧き出し、血を吸い尽くした後に肉まで食べる。

闇火風処(あんかふうしょ)

「この世の法則には無常ばかりではなく一定不変なものもある」と説いた者が堕ちる地獄。

悪風に吹き飛ばされた罪人の身体が風の渦の中で回転し続ける。

金剛嘴蜂処(こんごうしほうしょ)

「世の中には変わらないものもある」と、諸行無常を否定した内容を、説いた者が堕ちる地獄。

獄卒が、はさみで罪人の肉を少しずつ ちぎり取り、さらに それを自分自身に喰わせる。

分荼離迦(ふんだりか)

「餓死して天に生まれ変わる」と信じ、他人にも説いた者が堕ちる地獄。

白い蓮の花「分荼離迦」が咲いている池に行って水を飲もうとすれば火で焼き尽くされる。

大焦熱地獄

殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見に加えて、童女や尼僧など清く聖なる者を犯した「犯持戒人」の罪が加わった者が落とされる地獄で焦熱地獄の下にあり、広さは同じです。

等活地獄から焦熱地獄までの様々な責め苦を見せられて恐怖を味わって後にこの地獄の業火に突き落とされます。

焦熱地獄の10倍の苦しみがあります。

大焦熱地獄の四門の外には罪状に応じて更に十六の別地獄があり、「正法念処経」によれば

一切方焦熱処(いっさいほうしょうねつしょ)

仏教の在家の女性信者を犯した者が堕ちる地獄。

全ての場所、空にまで炎が満ちており、罪人たちは常に焼かれ、獄卒が罪人を巻物のように足から巻いていき、全身の血が頭部に集まったところで釘を打ちつける。

大身悪吼可畏之処(だいしんあくくかいしょ)

出家はしたがまだ僧にはなっていない女性を犯した者が堕ちる地獄。

獄卒が毛抜きはさみで、全身の毛を肉もろとも一本ずつ抜いて苦しめる。

火髻処(かけいしょ)

仏法を正しく身に付けて正しく行っている女性を犯した者が堕ちる地獄。

弓の弦のように細長い体に、鋭い牙を持った虫がたくさんおり、獄卒に縛られた罪人の肛門から侵入、内臓から脳まで食い尽くして頭部を食い破り外に出る。

雨縷鬘抖擻処(うるまんとそうしょ)

国家の危機的状況の混乱に乗じ、戒律を守っている尼僧を犯した者が堕ちる地獄。

回転する刀があちこちに生えており、身動きするとたちまち切り裂かれる。

吒々々嚌処(たたたざいしょ)

受戒した正行の女性と性行為を行った者が堕ちる地獄。

激しい風に吹き上げられてバラバラになり、肉があちこちに撒き散らされ、金剛の鼠に喰い散らかされ、芥子粒のように細かくなる。

雨沙火処(うしゃかしょ)

仏門に入ったばかりの尼僧を犯した者が堕ちる地獄。

500由旬の大火炎の底に金剛の砂の巨大な蟻地獄があり、灼熱の砂に飲み込まれる。

内熱沸処(ないねつふっしょ)

三宝帰依し、五戒を受けた女性に対して非法な事を行った者が堕ちる地獄。

あたりが炎に包まれている中で、五つの火山だけが木が茂り池があり、そこに行くと暴風に巻き上げられ火山内部で焼き尽くされる。

普受一切資生苦悩処(ふじゅいっさいしせいくのうしょ)

僧侶でありながら、戒を受けた女性を酒で酔わせてたぶらかし、道心を破壊し終わったあとで、財物を与えて性行為を行った者が堕ちる地獄。

炎の刀が皮膚をはぎ、肉がむき出しになった所をさらに炎で焼かれ、獄卒が溶けた鉄を身体に注ぎ込む。

鞞多羅尼処(びたらにしょ)

嫌がる女性と無理矢理に関係した者が堕ちる地獄。

暗黒の中で高熱の鉄の杖が雨のように降り、罪人に次々と突き刺さる。

無間闇処(むけんあんしょ)

善を治めた人物を女性に誘惑させて堕落させた者が堕ちる地獄。

金剛さえ突き破るほど鋭い嘴を持った虫が、文字通り罪人の骨の髄まで食い荒らす。

苦髻処(くかいしょ)

自分と関係しなければ王に讒言して罰を受けさせると脅迫し、立派な僧を誘惑して堕落させた女性が堕ちる地獄。

獄卒に鉄のヤスリで肉を削り落とされる。

髪愧烏処(ほっきうしょ)

酒に酔って姉妹を犯した者が堕ちる地獄。

灼熱の炉に入れられ、獄卒がふいごで火力を強め、太鼓の中に入れられ、獄卒がそれを激しく打ち鳴らす。

悲苦吼処(ひくくしょ)

特別な儀式の最中であるにも関わらず、姉妹と関係を持った者が堕ちる地獄。

一見すると平和そうな林があり、みんなそこに逃れるが、実はそこには巨大な千の頭の竜がたくさんいて、罪人を口の中で噛み砕く。

大悲処(だいひしょ)

教典などを学んでいる善人の妻や娘などをだまして犯した者が堕ちる地獄。

びっしりと刀が生えたヤスリのような床があり、獄卒にそこにこすり付けられ、形がなくなるまで擦り減らされる。

無非闇処(むひあんしょ)

自分の子の妻を犯した者が堕ちる地獄。

沸騰する釜の中で他の罪人共々煮られた後、杵でつかれて一塊の団子にされる。

木転処(もくてんしょ)

命を救ってくれた恩人の妻を犯した者が堕ちる地獄。

沸騰した河の中で逆さに煮られ、巨大な魚に喰われる。

無間(阿鼻)地獄

殺生・盗み・邪淫・飲酒・妄語・邪見・犯持戒人に加えて、「父母殺害」「阿羅漢殺害」など、仏教で最も重い罪を犯した者、五戒を全て破った者などが落とされる地獄で大焦熱地獄の下にあります。

無間地獄には体長が400キロもあるような銅製の地獄の番犬や鉄製の蛇、8つの手と18本の角を持った鬼などによって、休む間もなく苦しめられます。

他の地獄は休むような時間が少なからずありますが、無間地獄には休まることが無く、大焦熱地獄の千倍の苦しみになります。

無間地獄の四門の外には罪状に応じて更に十六の別地獄があり、「正法念処経」によれば

烏口処(うこうしょ)

阿羅漢(小乗仏教の最高指導者)を殺した者が堕ちる地獄。

獄卒が罪人の口を裂いて閉じないようにした上、沸騰する泥の河に落とし、溺れた罪人は泥の熱で内臓まで焼かれる。

一切向地処(いっさいこうちしょ)

とりわけ尊い尼僧や阿羅漢を強姦した者が堕ちる地獄。

頭を上にしたり下にしたり、くるくる回転させられながら、炎で焼かれ、また灰汁の中で煮られる。

無彼岸常受苦悩処(むひがんじょうじゅくのうしょ)

自分の母親を犯した者が堕ちる地獄。

鉄のかぎでへそから魂を取り出され、その魂に鋭い棘を刺され、へそに鉄の釘を打たれ、口に高熱の鉄を注がれる。

野干吼処(やかんくしょ)

優れた智者、悟りに達した者、阿羅漢、などをそしった者が堕ちる地獄。

鉄の口を持つ火を吐く狐が罪人に群がり、手、足、舌など罪のある部分を次々に食いちぎる。

鉄野干食処(てつやかんじきしょ)

仏像、僧房など僧侶の身の回りの品を焼き払った罪人が堕ちる地獄。

身体から火が吹き出し、空から鉄の瓦が雨霰と降り注ぐ。鉄の狐が罪人を喰う。

黒肚処(こくとしょ)

仏に属する物品を喰ったり自分のものとした者たちが堕ちる地獄。

罪人たちは餓鬼道さながらに飢え渇きに苦しみ、ついには自分の肉まで喰ってしまい、黒い腹の蛇が罪人を足の甲から喰う。

身洋処(しんようしょ)

仏に捧げられた財物を盗んだ者が堕ちる地獄。

燃え上がる二本の巨大な鉄の木の間に地獄があり、風で鉄の木が揺れて擦れ合うたびに、間にいる罪人たちを粉々にされ、その肉片は金剛のくちばしの鳥に喰われる。

夢見畏処(むけんいしょ)

僧侶達の食料を奪い、飢えさせた者が堕ちる地獄。

鉄の箱の中に座らされ、杵でつかれて肉の塊にされる。

身洋受苦処(しんようじゅくしょ)

篤志家が出家者や病人に布施した財物を僧侶を装って奪った者が堕ちる地獄。

高さ100由旬の燃える鉄の木の下にある地獄で、この世の全ての病が罪人を苦しめる。

雨山聚処(うせんじゅしょ)

辟支仏の食物を奪って喰った者が堕ちる地獄。

巨大な鉄の山に何度も押しつぶされ、獄卒に身体を引き裂かれ、傷口に高熱の液体を注がれ、人間界にある全ての病が罪人を苦しめる。

閻婆叵度処(えんばはどしょ)

田畑の水や飲み水の水源である河などを破壊し、人々を渇死させた者が堕ちる地獄。

象の様に巨大で火を吐く閻婆という鳥が、罪人をくわえて高空から落とし、地面には無数の鋭い刃が出ていて、炎の歯を持つ犬に噛まれる。

星鬘処(せいまんじょ)

修行によって飢えている僧侶から食料を奪った者が堕ちる地獄。

正方形の地獄の、二つの角の一方では釜の中で回転させられながら煮られ、もう一方では剣が混ざった激しい風にずたずたにされた後、釜の中で溶けた銅で煮られる。

苦悩急処(くのうきゅうしょ)

仏教の法を伝える書や絵画などを歪めたり破損したりいたずらしたりした者が堕ちる地獄。

獄卒が罪人の両目に溶けた銅を流し込み、その両目を熱砂ですり減らし、さらに身体の他の部分も同様にすり減らす。

臭気覆処(しゅうきふくしょ)

僧達の田畑や果樹園、その他彼らに帰属すべき物を焼いた者が堕ちる地獄。

無数の針が生えた燃え上がる網に捕らえられ、体中刺し貫かれながら燃やされ、矢で射られた後、サトウキビで叩かれる。

鉄鍱処(てっちょうしょ)

貧しい時代に僧侶達の面倒を見ると言いながら、何もせずに飢えさせた者が堕ちる地獄。

数多くの炎に取り囲まれ、餓鬼のごとく飢渇の苦しみを与えられる。

十一焔処(じゅういちえんしょ)

仏像、仏塔、寺舎などを破壊したり燃やしたりした者が堕ちる地獄。

獄卒たちが鉄棒を持って追いかけ、罪人たちは蛇に噛まれたり炎に焦がされながら逃げ続ける。

火車地獄(かしゃじごく)

極悪非道の者が即刻連れてこられる地獄。

乗り物の方の”火車”で罪人が連れてこられ、巨大な炎の車輪に縛りつけられて燃やされる。

鑊湯地獄(かくとうじごく)

現世で罪を犯した人間が釜茹でされる

鉄刺林地獄(てっしりんじごく)

鉄の棘が生えた木の生える林の地獄