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アニミズムとは
アニミズムとは大自然の中に存在するあらゆる物に霊魂や魂が籠っているという考え方で、有史以来世界中に存在する自然崇拝の信仰です。
アニミズムの由来
アニミズムという言葉はイギリスの人類学者であるE.B.タイラーが著書の「原始文化」の中で提唱して定着した言葉です。
アニミズムの「アニミ」は、ラテン語のアニマ(anima)に由来し、気息・霊魂・生命といった意味であり、人間だけではなくて、動植物や無機物にも霊魂や魂が籠っていて、その対象から離れることがあっても存在し続けるもので、目に見えない存在のことです。
霊魂や魂は目に見えませんが、特別な能力を持った呪術者や憑依などによって目に見える存在となります。
依り代として
我が国にも依り代としての信仰と考え方は定着しており、神が降りてくる自然物のことを依り代と言います。
依り代には社を建てたり、しめ縄を張ったり紙垂(しで)を下げたりしてお祀りしていますので、すぐに分かりますが、神が大木に降りてくる場合には御神木として、岩に降りてくる場合には磐座(いわくら)として、山に降りてくる場合には御神体として祀られます。
先祖の霊が木の札に降りてくるのが戒名が刻んである位牌で、仏教の先祖供養に採り入れられています。
呪物崇拝とは
呪物崇拝とは特定の物だけに特定の霊魂が宿るという信仰で、石などの自然物やその加工品などに特別な霊力が宿り、礼拝の対象として、或いは身に着けるものとして、霊力を得るためなどの理由で利用されます。
ストーンサークルや勾玉などの人造物も呪物崇拝に該当し、現代ではパワーストーンの利用などに引き継がれています。
原始宗教として
今の時代でも南米アマゾン奥地の先住民が生活する原始的な未開社会の中に息づいている宗教観としてアニミズムは存在していますが、聖書に基づくキリスト教の高度な教義からすれば低俗なものと見られ、改宗させられて、旧来の伝統文化を失いつつあります。
我が国のアニミズム
我が国では「八百万の神々」と言われるように太古の昔から実に多くの神々が降臨され、大自然の中や神社、住居などの身近な場所に居られます。
自然崇拝の信仰は今でも伝統民族の中に息づいています。
琉球神道
琉球神道とは古代琉球王国時代、或いはそれ以前より続く沖縄地方独自の信仰であり、教義や経典などを持ちませんが、自然崇拝のアニミズム信仰や神話として受け継がれています。
セジ
セジとは霊力のことであり、門、港、舟、社、城、石などの様々な物に憑いて霊力を発揮して、人に憑けば超能力を持った超人となります。
セジが人に憑いた場合には神として振る舞うことがあることや、セジがどんな物にでも憑くことから、原子的なアニミズムの形態であると言えます。
ノロ
沖縄の村落には必ず御嶽(ウタキ)と呼ばれる神の住む聖林があって、村落の祭祀や祈願の際にはノロと言われる女神官が祭祀を行います。
ノロの大切な役割として、神が降臨する聖地である御嶽で祭祀を行って神懸りしながら神の意向を伺い、それを地域の住民に伝えることで共同体を維持していたのです。
ユタ
祈祷することで死者の憑依を受けて死者の言葉を語り、東北地方での口寄せ巫女的な役割を果たしています。
沖縄にはこのように神々や先祖と交流、通信する役割を持った人が多数存在し、今でも人々の生活に役立っているのです。
アイヌのアニミズム
北海道の先住民族であるアイヌもまた独自の文化を持っています。
アイヌ語で人間のことを「アイヌ」と言い、神のことを「カムイ」と言います。
アイヌでは動物や植物、自然現象、日用品などのあらゆる物に「ラマッ」と言われる魂が宿っていると考えられ、「イオマンテ」の儀式では、神が毛皮と肉を携えて人間界に現れたと考えられている熊の魂を天界に送り返します。