身代わり地蔵とは
身代わり地蔵とは、地蔵菩薩が自らの信者が受けるであろう病気や怪我などの災難を、信者の代りに受けると信じられている伝承のこと。
身代わり地蔵の昔話
昔ある所に年老いて病気の母親と親孝行の息子が二人で暮らしていました。
親孝行の息子は貧乏でしたが信心深く、毎日近くのお地蔵様に手を合わせておりました。
ある日母親が息子に「ウリを食べたい」と言われましたが、買うお金が無かったので悪い事と思いながらも長者の畑に忍び込み、ウリを盗んで母親に食べさせますと「うまいうまい」ととても喜んだのです。
しばらく経ってからのこと母親から「もう一度だけウリを食べたい」と言われたので再び長者の畑に忍び込みウリを盗んでいたところ、運悪く長者に見つかってしまい、刀で肩を斬られて倒れてしまいました。
しばらくして息子は目を覚まし、肩に手を当ててみると傷が無い事に気が付きました。
肩を斬られて死んでいるはずの自分が傷無しで生きていることを不思議に思いながらもお地蔵様にお礼を言いに行くと、お地蔵様の肩には刀で斬られた傷があったのです。
このお地蔵様は「身代わり地蔵」と呼ばれて村人からとても大切にされました。
泥棒は罪です
美談としての身代わり地蔵ですが、理由の如何に関わらず人の物を盗むことは悪いはずなのに、何故息子を助けたのでしょうか。
それは普段から親孝行をしていて、信心深い善良な人間だったからであり、やむを得ない悪事なので、お地蔵様が救ってくれたのでしょうけれど、一番の理由は普段からお地蔵様を信心していたからなのです。
毎日熱心に信仰する神仏が信者の危機を救ってくれるという事があるのです。
殺生は重罪です
ウリを盗んだぐらいで孝行息子を刀で斬ってしまう長者の罪も重く、取り返しのつかないことですが、お地蔵様は息子の代りに自分が斬られることで仏法の救済を実践されたのです。
地蔵菩薩は六道の入り口に居て、三悪趣に堕ちてしまう人の救済を体を張って実践していることが身代わり地蔵の話に繋がっています。
それでもお地蔵様は救ってくれる
身代わり地蔵の話は実は大変に惨い話ではありますが、偸盗も殺生もいけませんよということを自らの身体を張って説いているのです。
それでも救ってくれるというのがお地蔵様で、実に有難い菩薩様なのです。
身代わり地蔵と言えども地蔵菩薩と同じです。
地蔵菩薩の真言は「オン カカカ ビサンマエイ ソワカ」(Oṃ ha ha ha vismaye svāhā)
十三仏の真言の中にも入っていますし、お墓の入口や村の辻などにお祀りされていることが多いので、よく目にする菩薩です。
真言は三回、七回、二十一回、百回、千回などの数唱えます。