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護符とは
護符とは神仏の姿形や種子(しゅじ)、真言などが書かれた札のことで、身に付けたり壁に貼ったりして神仏の加護や厄災消滅を願うもの。
災難の原因
古代より天災や飢饉、疫病などの災難は鬼神や疫病神、星宿の仕業であると言われ、鬼神や疫病神、星宿を寄せ付けず、家や人を守るための御守りとして護符が使われてきました。
災難をもたらすのが眼には見えない相手だけに呪術を操る密教僧や陰陽師達が日常の生活のあらゆる場面で災難に対して調伏の修法を行い、魔除けの護符を配ることで信者を増やしていたのです。
現代に於いても寺院や神社で頒布している御札や御守りには護符として伝わったものがそのまま使われていることもよくあります。
御札と護符
御札と護符の明確な違いは無く、どちらも厄や災難を払い、神仏や天の守護を願うものです。
御札の文字は読むことが出来ることが多く、何となく意味が分かるのに対して護符は記号や図形などが意味不明なことが多いので、護符の方が仏教とは無縁の土着の信仰のまじないに由来していることが多いようです。
実際の護符
護符には記号や図形、人や動物などが描かれています。
護符の種類は実に多く、用途も様々な用途がある中で、一部の護符について紹介致します。
元三大師
良源(りょうげん-延喜12年(912年)9月3日~永観3年(985年)1月3日)は平安時代の天台宗の僧侶で、世の中に疫病が流行っていた永観2年(984)のある時、良源のもとに疫病神がやってきて疫病を発症するも法力で疫病神を退散させ、鏡の前で観念三昧に入ってその鏡に映し出された角が生えた鬼の姿を弟子に描き写させて版画にしたものが「角大師」と言われる御札なのです。
「この札を人々に配布して戸口に貼り付けるようにすれば、邪魔は近づかず、疫病はもとより一切の厄災から逃れられるであろう」との良源の教えを弟子達が実践し、疫病除けの御札として民衆に配ったところ、疫病は収まったそうです。
元日の三日に遷化されたので元三大師(がんさんたいし)とも言われます。
走人足留法(はしりびとあしどめほう)
走人足留法(はしりびとあしどめほう)とは家出や行方不明になった人の足を止めて家に帰らせる法のこと。
護符の中央部にある九字(横5本の線と縦4本の線)の中に走人の年と名前を書いて護符を祀り、走人の年の数だけ般若心経を唱えます。
流行病除(りゅうこうびょうよけ)
悪い流行病が流行っている時にこの札を家の中に貼れば流行病が家の中に入ってこないという護符です。
鎮宅霊符(ちんたくれいふ)
鎮宅霊符は家の中の安全を保つための護符で72種類あり、「鎮宅七十二道霊符」または「太上秘法鎮宅霊符」とも言います。
上の護符は「辟邪驅鬼復正保家」(じゃをさけ、きをかり、せいをふくし、いえをやすんず)という護符で、邪鬼を避けて悪鬼を退け、正しく修復し家を平和に保つための護符です。
「鎮宅七十二道霊符」の内容については
- 厭釜鳴狗上床斬火光一切鬼(かまなり いぬ ゆかに のぼり かこうをきる いっさいの きを たつ)
- 厭猪猫、犬等自食子怪(い ねこ いぬ など みづから こを くらう かいを たつ)
- 厭除禍害之鬼(かがいの きを たちのぞく)
- 厭刀兵衰耗鬼(とうへい すいこうの きを たつ)
- 厭牛馬六畜死傷鬼(ぎゅうば ろくちく ししょう きを たつ)
- 厭除風火之怪(ふうかの かいを たちのぞく)
- 厭水潦火光怪(すいりょう かこう かいを たつ)
- 厭不宜男女長命(なんにょの ちょうめい よろしかざるを たつ)
- 厭横損財謀害之鬼(よこさまに ざいを そんし、ぼうがいの きを たつ)
- 厭惡鬼(あくきを たつ)
- 厭除氣運陰陽不和(きうん いんよう わせざることを たちのぞく)
- 厭除口舌惡事侵害(くぜつ あくじの しんがいを たちのぞく)
- 厭除凶殃侵害之鬼(きょうおう しんがいの きを たちのぞく)
- 厭鎭凶惡之鬼(きょうあくの きを たちしずむ)
- 招金銀入宅富貴不逢殃禍(きんぎん にゅうたくを まねき、ふうきにして おうかに あわず)
- 厭盗賊口舌無端之鬼(とうぞく くぜつ たえざるの きを たつ)
- 厭鶏夜鳴百怪之鬼(とり やなきを ひゃっかいの きを たつ)
- 厭時氣不和惡事滅(じき かせざる あくじを ほろぼし たち)
- 厭口毛兵尅害人口之鬼(かりへい こくのがい じんこうの きを たつ)
- 厭除養蠶不成之鬼(ようさん ならざるの きを たちのぞく)
- 厭狂畜物損傷人之鬼(きょうちく ものと ひとを そんしょうするの きを たつ)
- 厭惡夢經求無利息(あくむをみて けいきゅうするに りそく なきを たつ)
- 厭北方土氣耗損之鬼(ほっぽうの どき こうそんの きを たつ)
- 厭南方土氣害人口(なんぽう どき じんこうを がいすることを たつ)
- 厭除家鬼尅害人口(かき じんこうを こくがいするを たちのぞく)
- 厭西方土氣損人口(せいほうの どき じんこうを そんするを たつ)
- 厭中央土氣移動鬼(ちゅうおう どき いどうするの きを たつ)
- 此符大招經營遂意(このふ おおいに けいえい いを とぐることを まねく)
- 厭飛屍鬼侵害人口(ひしのき じんこうを しんがいするを たつ)
- 此符大招官職(このふ おおいに かんしょくを まねく)
- 宜官職折伏屍爲禍(かんしょくに よろしく ふしの かを なすを くじく)
- 厭伏屍鬼損害人口(ふしきの じんこうの そんがいするを たつ)
- 盗賊不侵萬事稱意(とうぞく おかさず ばんじ いにかなう)
- 厭除日重疾病之災(ひに おもき しっぺいの さいを たちのぞく)
- 龍神非吊(りゅうじん ひちょう)
- 厭犬鶏狐狸鳴上屋(いぬ とり こり なきて おくに のぼるを たつ)
- 招金銀自入大富貴(きんぎん おのづから いり だいふうきを まねく)
- 厭蛇虫作諸怪祟(へび むし もろもろの かい たたり なすを たつ)
- 保宅舎門戸人口清吉(たくしゃ もんこを たもち じんこう せいきつなり)
- 厭神祠精魅鬼(しんし せいまいの きを たつ)
- 厭殺星(さつせいを たつ)
- 厭除發狂萬物之精(はっきょうするを ばんぶつの せいを たちのぞく)
- 厭東方土氣精耗鬼(とうほう どき せいこうの きを たつ)
- 厭除官刑獄鬼(かんけい ごくの きを たちのぞく)
- 厭老樹木作精魅鬼(ろうじゅぼくが せいまいの きを なすを たつ)
- 厭除淫祠好惡之鬼(いんし こうおの きを たちのぞく)
- 三光百靈雷電不侵(さんこう ひゃくれい らいでん おかさず)
- 厭除太歳疾疫之侵(たいさい しつえきの おかすを たちのぞく)
- 厭天反地復馬不生兒之鬼(てん はんし ち ふくし うま こを しょうぜざるの きを たつ)
- 厭官司呼喚火速事(かんしに しからる かそくの ことを たつ)
- 辟邪驅鬼復正保家(じゃを さけ きを かり せいに ふくし いえを やすんず)
- 厭疫氣百雑鬼(えきき ひゃくざつの きを たつ)
- 厭夢寐驚人鬼(むびに ひとを おどろかす きを たつ)
- 厭自焙男女胎衣血腥不浄鬼(おのづから なんにょの たいえ ちなまぐさき ふじょうの きを たつ)
- 厭牛馬六畜死、奴婢迯亡之鬼(ぎゅうば ろくちく しし ぬひ とうぼうの きを たつ)
- 厭不時驚恐悩人之鬼(ふじに きょうきょう ひと なやます きを たつ)
- 除腹脹飮食不下鬼(はらはり いんしょくの くだらざる きを のぞく)
- 厭丘塚伏屍疾病鬼(おかつか ふし しっぺいの きを たつ)
- 厭鬼怪不時呼人姓名(きかい ふじに ひとの せいめいを よぶことを たつ)
- 厭盗賊驚恐人(とうぞくの ひとを きょきょうすることを たつ)
- 厭伏屍生殺鬼(ふし せいさつの きを たつ)
- 厭不宜田養蠶疾病之鬼(てんさん よろしからず しっぺいの きを たつ)
- 厭百怪口舌之鬼(ひゃっかい くぜつの きを たつ)
- 厭蛇鼠食蠶夫婦反目不和事(へび ねずみ かいこを くらい ふうふ はんもくし かせざることを たつ)
- 田蠶六畜蕃息(でんさん ろくちく はんそくす)
- 厭除百鬼不得害人(ひとを がいする えざらしむ ひゃっきを たちのぞく)
- 宜子孫大貴和睦長命(しそん おおいに たっとく むつまじく ちょうめいするに よろしき)
- 厭除疾病連綿之鬼(しっぺい れんめんの きを たちのぞく)
- 厭除疾病盗戒虗耗之鬼(しっぺい とうかい きょこうの きを たちのぞく)
- 厭病患沈重減福短壽之鬼(びょうげん ちんちょうし ふくを げんじ じゅ みじかくするの きを たつ)
- 厭産耗鬼不平尅害(さんこう きの ふへいにして こくがいするを たつ)
- 厭不祥牛畜生産鬼(ふしょう ぎゅうちく せいさんの きを たつ)
蘇民将来(そみんしょうらい)
蘇民将来とは遊行神に宿を提供した善行によって神から教えられた茅の輪や護符を祀ることにより子孫の繁栄を約束されたという説話のことです。
蘇民将来の護符には家を表す「門」という文字の中に「蘇民将来子孫家」と書かれて更には「七難即滅、七福即生」などと書かれ、蘇民将来の子孫の家なので、災難が無くなり幸せが訪れるようにとの願いが込められて正月の注連縄と共に家の玄関に祀られます。