四天王とは
四天王は仏教の世界観である須弥山の中腹に居住して仏法を守護している東方の持国天、南方の増長天、西方の広目天、北方の多聞天の四方の守護神のこと。
仏法守護の必要性
私達人間の世界に善人と悪人が居るように、神々の世界でも善神と悪神の両方が居て、仏法を一人でも多くの衆生に伝えようとする善神に対して、衆生を悪の世界に誘惑し、善神の活動を邪魔しようとするのが悪神です。
悪神は衆生が悩み・苦しむこと、そして互いに憎しみあって傷つけ合うことを喜び、衆生が仏法に近付くことや真面目に修行することを嫌い、悟りの境地に至る修行者が増えることを最も嫌います。
悪神は鬼や妖怪などの姿をしていますが、時には美人の姿で修行者に近付いて修行の邪魔をすることもあります。
釈迦が悟りを得る前には実に様々な鬼神たちが出て来て修行を邪魔するためにありとあらゆる攻撃を仕掛けてきたそうです。
仏法の世界には悪事を重ねていた鬼神が仏に教化されて仏法の守護神になった者がたくさん居られます。
四天王が足元に踏む邪鬼も四天王に教化されて仏法守護の役割を果たしているのです。
四天王の居所
四天王は欲望に満ちた世界である六欲天の第1天にあって、須弥山頂上の忉利天(とうりてん)に住む帝釈天に仕え、八部鬼衆を眷属として従え、仏法を守護しています。
須弥山のふもとにある四州を守護していて、それぞれの担当は
- 持国天…東勝身洲を守護する
- 増長天…南贍部洲を守護する
- 広目天…西牛貨洲を守護する
- 多聞天…北倶盧洲を守護する
四天王の眷属
四天王に仕える眷属は次のようになります
- 持国天…乾闥婆(げんだつば)、毘舎遮(びしゃじゃ)を眷属とする
- 増長天…鳩槃荼(くばんだ)、薜茘多(へいれいた)を眷属とする
- 広目天…龍神、富単那(ふたんな)を眷属とする
- 多聞天…夜叉、羅刹を眷属とする
四天王の姿形
四天王には決まった作風はありませんが、忿怒相で鎧兜に身を包んで足元に邪気を踏むのは大体同じです。
持物ととしては
- 持国天…剣、鉾など
- 増長天…剣、鉾など
- 広目天…右手に筆、左手に巻子
- 多聞天…右手に塔、左手に鉾、宝棒など
我が国の四天王の歴史
「日本書紀」によれば、大陸から渡来した仏教の受け入れを巡って対立した蘇我馬子と物部守屋との戦いに参戦した聖徳太子は、四天王に祈願して勝利したことに対しての感謝から、摂津国玉造(現在の大阪市天王寺区)に四天王寺を建立したとされます。
当時の状況では仏教は大陸の宗教でありながら最新の政治、経済、建築、土木、天文学、鉱物、地質などの総合的な優れた文化を伴っていたことから、国家を統一するためには必要とされましたが、一方では仏教が野蛮的な宗教であるとする保守的な勢力と対立していたのです。
四天王信仰
四天王は寺院でよくお祀りされていますが、全方向を護る迫力ある姿ということで四天王の仏像はとても人気がありますし、個人的な信仰としても人気があります。
四天王の真言
- 持国天…オン・チリタラシタラ・ララ・ハラハタナウ・ソワカ
- 増長天…オン・ビロダカ・ヤキシャヂハタエイ・ソワカ
- 広目天…オン・ビロバクシャ・ナカヂハタエイ・ソワカ
- 多門天…オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ