人の振り見て我が振り直せとは
「人の振り見て我が振り直せ」とは人の振る舞いの善悪を見て自分の振る舞いを改めよという諺で、「振り」は「振る舞い」のことです。
自分の振る舞いの善悪は自分では分からない
誰にでも言えることですが、自分の振る舞いの善悪は案外自分では分からないもので、たとえば道にゴミが落ちていた場合にゴミを避けて通る人も居れば拾ってゴミ箱に入れる人も居るのですが、どちらの行動にしても自分ではそれが当たり前だとしか思っていない訳で、正しいかどうかの判断はつきにくいものです。
しかし自分の傍を歩いていた人が落ちていたゴミを拾ってゴミ箱に捨てる所を見たら、それは素晴らしい行動だと感動し、そのような行動が出来なかった自分が恥ずかしいと反省することでしょう。
自分では当たり前だと思っていることでも他人の行動を見た時に反省して改めるということはよくあることですから、「他人は自分を映す鏡」と言われるように、他人の行動の善悪というものは、自分を正すための鏡でもあるのです。
良いことは真似をする
他人の振る舞いを見て良いと思った所は是非自分も真似してみましょう。
良いか悪いかの判断の基準は十善戒で学びましょう。
十善戒とは仏教に於ける十悪を否定する形にした戒律のことです。
- 不殺生(ふせっしょう)…生きものを殺さない
- 不偸盗(ふちゅうとう)…盗まない
- 不邪淫(ふじゃいん)…淫らな行いをしない
- 不妄語(ふもうご)…嘘をつかない
- 不綺語(ふきご)…お世辞などを言わない
- 不悪口(ふあっく)…悪口を言わない
- 不両舌(ふりょうぜつ)…二枚舌を使わない
- 不慳貪(ふけんどん)…むさぼらない
- 不瞋恚(ふしんに)…怒らない
- 不邪見(ふじゃけん)…間違ったものの見方をしない
十善戒を元にした善行の内容は
- 不殺生(ふせっしょう)…生きものを慈しみ、命を大切にする
- 不偸盗(ふちゅうとう)…困った人に施す
- 不邪淫(ふじゃいん)…お互いに尊重し合う男女関係
- 不妄語(ふもうご)…正しい言葉、安らぐ言葉、癒される言葉で真実を語る
- 不綺語(ふきご)…利害関係に捉われることなく真実を言う
- 不悪口(ふあっく)…相手の良い所を称賛する
- 不両舌(ふりょうぜつ)…相手の良い所を他の人に伝える
- 不慳貪(ふけんどん)…自らは小欲知足、人には施す
- 不瞋恚(ふしんに)…慈悲の心で相手に接する
- 不邪見(ふじゃけん)…常に正しい判断、見方をする
悪いことは真似しない
他人の振る舞いを見て悪いと思ったことは真似してはいけません。
具体的には十善戒を破ることが悪い行いになります。
今の世の中私達の生活はどんどん苦しくなり、治安も悪くなっていますし、戦争の足音が身近に迫るような時代になってきましたが、だからと言って自分さえ良ければそれで良い、人の事などどうでも良いという考えは餓鬼の世界に通じ、やられる前にやってしまえ、邪魔者は消え失せろという考えは地獄の世界に通じます。
悪いことを真似していたら自分の心が穏やかでいられなくなります。
我が振りを直すこと
人の振る舞いを見ても「人は人、自分は自分」ということで無関心であったり、善悪を思うことがあっても自分の行動に全く反映しなかったりでは人としての魂の成長がありません。
人の振る舞いを見て自分の振る舞いを正すことが大切なのです。
天の世界では自分のためにという自己満足の発想が全く無く、相手の喜びを思う者ばかりでなので、一切の争いがありませんので、他の振る舞いを見ても不快な思いをするようなことが無いのです。
しかし私達人間の世界では善と悪が混在していますので、時には他人の振る舞いを見て不快な思いをするようなことがありますが、そういう時にこそ自らも怒り狂って心を乱すのではなく、自らの行いを反省し、心が平和で居られるようにすることが「人の振り見て我が振り直せ」なのです。