不両舌について

二枚舌のイラスト

不両舌とは仲違いさせるようなことを言わないということで、身(体の行い)、口(口で発する言葉)、意(心で思う事)の規律である仏教の十善戒の中で、口で発する言葉に関する規律の一つです。

「両舌」とは

「両舌」とは両方の人にそれぞれ違うことを言って、お互いを仲たがいさせることで、「二枚舌」とも似ていますが、二枚舌は一つの事に対して前後矛盾したことを言うことですから少しニュアンスが違います。

「不両舌」という戒律は他人を仲違いさせるような言葉を言わない、という戒律になります。

両舌が良くない理由

女性Aと男性Bの仲の良い恋人同士が居たとして男性Cさんは、以前から女性Aさんに好意を寄せていたのに男性Bさんが現れたことで取られてしまったことに怒り嫉妬を覚え、AさんとBさんに対してお互いが嫌いになるようなことを言い続けたらお互いに不信感を抱き、別れてしまいました。

このような方法を両舌と言いますが、特に仏教では人の仲を裂くための嘘をついてはいけないという戒めであり、釈迦の時代以前から国と国との争いが絶えることなく、相手を滅ぼすための戦略としての作戦として使われていました。

例えばAとBの国の隣にCという国があって、AとBが戦争してくれてお互い壊滅状態になればCの国はうまくいけばAとBを吸収して強い国になれるのです。

AとBの国が戦うように嘘の情報を流すことこそが両舌なのです。

そう言われても

あいつとあいつは気に入らないから仲違いさせてやりたい、あいつとあいつの組み合わせで調子に乗るから私の人生が狂ってしまった…などのことが世の中実際にたくさんあるもので、ちょっと頭の良い人でしたら、自分が傷つくことなくお互いに喧嘩して破滅の道を歩んでくれたらさぞや愉快なことでしょう。

言葉というものは口から発するだけで何かを壊したりはしませんが、その言葉によって人の心を傷つけたり、争いの原因になったりするもので、両舌の罠によって実際に滅びてしまった人がたくさん居るのです。

仏教では争いの原因である怒りの心は捨てなさいと説きます。

怒りの心は相手を滅ぼすかもしれませんが、やがては必ず自分も滅びるのです。

怒りの心を捨てて他を慈しむ心を持ちなさいと説くのです。

正しい言葉とは

仏教が説く正しい言葉とは、矛盾の無い真実の言葉なのです。

口から発する言葉は相手を傷つけることも出来ますし、相手を安心させることも出来るのです。

真実は誰に対しても同じであり、何時の時代も変わりませんので、人によって違うようなこともありません。

人を仲違いする智慧を磨くよりは、人を仲良くさせる智慧を磨きなさい。

人として与えられた時間は限られていますよ、大切に使わないとすぐに終わってしまいますよ。