煙を浴びるとは
寺院の参拝時に屋外に大型の屋根付き香炉が設置されている所では参拝者が奉納した線香の煙が常に立ち昇っていて、奉納した線香の煙を浴びることで厄を払い、願い事が叶うと言われています。
煙のある風景
明治時代頃までは家庭の台所は土間にあって火を焚くかまどで調理し、風呂も薪を焚いて沸かしていましたので、食事時にはどの家の煙突からも煙が立ち上っていたのでした。
私の子供の頃でさえも風呂は石炭で湧かしていましたので夕方になったら家々の煙突から煙が立ち上っていたものでした。
どの家にも必ず火をつけるためのマッチがあり、読み終えた新聞は焚き付けとして重宝していましたし、少々の可燃ごみは風呂の釜の中に入れて燃料として活用していたのです。
今の時代では煙は息が苦しくなる、部屋の中が臭くなる、洗濯物に匂いが付く、環境に悪影響を与えるなどの理由で私達の生活から遠ざかってしまいました。
煙の効用
火を燃やした時の煙には煙には防虫効果と防腐効果があることが昔から知られていて、かまどのある台所の柱は煤で真っ黒になり防虫効果を発揮して虫を寄せ付けることなく長持ちしていたのです。
今でもキャンプでは焚火を利用した燻製キットが利用されていますが、香りのある木の煙でいぶすことによって肉のおいしさを倍増させ、香ばしいハムや燻製が出来上がるのです。
煙は更に厄払いの効果があって、柴燈護摩の煙に当たれば厄を祓うと言われ、護摩の後の残り火を裸足で渡ることによって無病息災の効果があり、護摩が済んだ後の灰を持ち帰って家の周りに撒くと厄災消滅の効果があると言われています。
煙を浴びる
寺院にお参りした時に屋外の屋根付き香炉にお線香を御供えした時に、その煙を両手で自分の身体に浴びる動作をする人が多いのは、煙で身と心を浄化するためであり、更に天に昇っていく煙を浴びることにより願い事が叶うようにとの気持ちの表れなのです。
私達が煙を浴びるという仕草はお墓に参った時や、神社の御札のお焚き上げ、どんど焼きなどでも見られます。
煙が天と地を繋ぐ大切な役割を担っていることから、立ち上る煙に対して御利益にあやかりたいという気持ちを持つことは自然なことなのかもしれません。