五穀豊穣とは

五穀豊穣のイラスト

五穀豊穣とは米、麦、粟(あわ)、豆、黍(きび)または稗(ひえ)の五穀が豊かに実ること。

五穀について

五穀とは五つの主要な穀物で、現代では米、麦、粟(あわ)、豆、黍(きび)または稗(ひえ)のことを言い、昔から主食になる大切な保存食なので、豊かに実るための天候に恵まれて、病虫害が発生しないように神々の意向を伺い、祈ることが地域の大切な行事として今でも引き継がれています。

五穀の内容については古代から一定した決まりはありません。

密教の五穀

火の効用

密教では護摩を焚く時に五穀を使います。

五穀は仏に対する貴重な御食事の接待として火中に投じます。

「成就妙法蓮華経瑜伽智儀軌」によると稲穀・大麦・小麦・菉豆・白芥子が五穀になります。

「建立曼荼羅護摩儀軌」によると大麦・小麦・稲穀・小豆・胡麻が五穀になります。

五穀豊穣の願いと祈り

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現代の経済社会ではお金さえあればどんな食べ物でも手に入りますが、もし縄文時代に生まれていたら、自分で食べる物は自分で獲りに行かないと生きていくことが出来ません。

稲作が始まった弥生時代でも肥料や農薬が普及していない手作業の農業は、干ばつや長雨の影響で収穫が少なかったり、病虫害で全滅ということが度々起こり、そういう年には食べる物に不自由して飢饉や疫病で人々が苦しむことを繰り返してきたのです。

五穀が豊かに実ることが無い年には忽ち多くの人が病気や死の恐怖に直面するのです。

天候や環境は全て神々の意思で操作されると考えられていたので、稲作の種まきや水張り、収穫などを行う日は暦に順い、その都度神々に祈りを捧げて五穀豊穣を願ったのです。

五穀豊穣と大黒天

大黒天

大黒天七福神の中の神であり、烏帽子・袴姿で右手の拳を腰に当てるか打ち出の小づちを持ち、左手で大きな袋を左肩に背負い、米俵の上に立つ姿で表現されています。

大黒天は財福と厨房の神と言う特徴を持ちながら、五穀豊穣の御利益があるということで信仰されています。

五穀豊穣は商売繁盛にもつながることから、恵比寿天と共に信仰されることも多く、共に商売繁盛縁起を担ぐために景気の良い神として知られているのです。

五穀豊穣は皆のため

私達は神社や寺院に参拝して願い事をする時に、どうしても自分の願い事ばかりになってしまいますが、毎日おいしいご飯を食べることが出来るのは作ったり運んだり売ったり料理したりする人が居るからであり、そういう人達の努力の賜物によって毎日の食事が成り立っていることを思えば、私達も五穀豊穣や国家安穏を日頃から願うと共に、関わった人達や神仏に感謝することが大切です。

仏教では自分の目の前にある食べ物が多くの人の関りによって今ここにあることを感謝し、そういう御縁を下さった神仏を敬い、周囲の目に見えぬ命に対しての施しを実践することが平和な社会になることを説いているのです。