不淫戒とは
不淫戒とは男女間の淫らな行いを禁止する「不邪淫戒」よりも更に厳しく、一切の性交渉を行わないという戒律です。
不淫戒の由来
釈迦の在世中は特に戒律などはなく、誰でも出家出来ていましたが、出家者にとって戒律が出来たのは、釈迦の教団が出来てから十三年目のことで、ある事件がきっかけになったそうです。
それは家系を絶やさないでほしいと母親に泣きつかれた比丘が、出家する前の妻と子供を作る行為をなすという事件のことでした。
それに対して釈迦は、「たとえ毒蛇の口の中に男根を入れることがあっても、女根の中に入れてはならない」とその比丘を呵責し、ここに初めての禁戒である淫戒(いんかい。淫をおこなってはならない)が制定されたのです。
この戒があるために我が国でも明治時代までは僧侶の妻帯は許されず、子供をもらってきて後継者として育てたり、弟子として入門した小僧を育成して後継者にしていたのです。
不淫戒の含まれる戒律
不淫戒は主に出家者が守るべき戒になります。
具足戒
大人の人が出家する場合には具足戒を受ける必要があります。
具足戒の中には不淫戒が含まれています。
八斎戒
在家の信者が毎月6日間「六斎日」に一日だけ出家者と同じ厳しい戒律を守ることを八斎戒と言います。
八斎戒の中にも不淫戒が含まれています。
八斎戒は在家の五戒が基本になっていますが、五戒の中の「不邪淫戒」が「不淫戒」となり、他に身を慎んで過ごすための追加項目があって八つの戒になっています。
- 不殺生戒…殺さない
- 不偸盗戒…盗みをしない
- 不淫戒…性交を行わない
- 不妄語戒…嘘をつかない
- 不飲酒戒…酒を飲まない
- 不得過日中食戒…正午以降は食事をしない
- 不得歌舞作楽塗身香油戒…歌舞音曲を見たり聞いたりせず、装飾品、化粧・香水などで身を飾らない
- 不得坐高広大床戒…地面に敷いた臥具だけを使い、贅沢な寝具や座具でくつろがない
四波羅夷罪とは
四波羅夷罪(しはらいざい)と言って破戒するとただちに教団から追放となり、再出家も許されないという四つの戒について説明します。
出家して仏門に入り戒律を受けて戒名を名乗り、仏に仕える身となった以上、四波羅夷罪を犯して教団から追放されたら悟りの道は閉ざされてしまいます。
- 婬戒…性行為をしない
- 盗戒…他人のものを盗んではいけない
- 殺戒…生き物を故意に殺してはならない
- 妄語戒…嘘をついてはいけない
不淫戒は破ってしまったら重罪として即、教団追放になります。