五体投地とは

五体投地のイラスト

五体投地とは両手、両膝、額を地面に投げ伏して仏や高僧などを拝む作法で、相手に対する最大の敬意を表します。

チベットの聖地巡礼

五体投地のイラスト

チベットには五体投地による聖地巡礼が盛んに行われていて、車も通る一般の道路を家財道具を積んだリヤカーを引いて、祈りながら五体投地による前進を1日中繰り返して夜にはテントで野宿をし、約2000kmほどの距離を目的地であるジョカン寺を目指して何年もかけて到着する「ラサ巡礼」はチベット仏教徒にとっての一生の悲願となっています。

手には手板を、胸から下には皮の前掛けを付けていても地面に体を叩きつけながらの前進で服や靴がボロボロになりながらも進み続けるのは仏に対する強い信仰心の表れであり、今生きている間に功徳を積んで来世の良い生まれ変わりを願うという輪廻転生の考えが浸透している証なのです。

チベットでは仏の降臨する山として知られる標高6700メートルのカイラス山の周囲52kmの道のりを五体投地で巡礼する「カイラス巡礼」も有名で、カイラス山はチベット仏教の他にボン教、ジャイナ教、ヒンズー教の聖地でもあり、神が降臨する山として知られています。

三千仏名経

経典を持った僧侶のイラスト

仏教では過去・現在・未来のそれぞれに千の仏が出現するとされ、それを列挙したのがこの三千仏名経です。

過去荘厳劫千仏名経、現在賢劫千仏名経、未来星宿劫千仏名経の3巻を併せて三千仏名経と言われています。

現在の仏には釈迦如来も含まれています。

三千の仏の名を唱えながら五体投地を行うのが三千仏礼拝行で、過去に犯した罪を懺悔し、魂を浄化するために行い、受戒や年末の恒例行事として行う寺院もあります。

この場合の五体投地は聖地を目指して前進するような礼拝法ではなく、堂内の定位置で立ち上がった状態で仏の名を唱えながらひざまずいて両手と額を床に付ける礼拝になります。

強い信仰心

僧侶の説明のイラスト

仏教では迷いの世界で悩み苦しむ根本の原因が欲望、煩悩にあるとして煩悩にまみれてしまった心身を浄めるには仏・法・僧の三宝帰依することが求められます。

何よりも絶対的な立場としてのそのものに帰依することが最初に求められ、次に仏の説く法、そして法を広める僧に帰依することが求められるのです。

心に仏を念じながら自らの過去の過ちを懺悔し、仏に救いを求めるために私達が出来ることは、只ひたすらに仏に対する最大限の礼拝を繰り返すだけであり、全身全霊を駆使しての礼拝でしかあり得ないのです。

「南無阿弥陀仏」の念仏も、踊念仏も然りで只ひたすらに同じことを何も考えることなく繰り返すことが自らを無にする修行であり、自らが無になった時に仏に一歩ずつ近づくことが出来るのです。

衆生にとっては難しい経典を読んだ所で理解することは困難で、ましてや悟りの世界は遥か彼方の遠い世界ですが、そこに近づくには自らの心と体を精一杯使って礼拝するだけだということを教えてくれるのが五体投地なのです。