大元帥明王とは
大元帥明王(だいげんすうみょうおう)はインド神話における鬼神「アータヴァカ」であり「林に住む大将」という意味で、毘沙門天の眷属の八大夜叉大将に含まれます。
真言密教においては「帥」の字は発音せず「たいげんみょうおう」と読み、「太元明王」と記すこともあります。
アータヴァカについて
恨みを抱いて不遇の死を遂げてしまった将軍が夜叉に生まれ変わって城内の住人を次々と食べていたので、人々は夜叉の暴挙を鎮めるために一つずつ生贄を供えるようにしたそうです。
ある長者の順番が回ってきた時に生まれたばかりの赤ん坊が捧げられましたが、長者夫婦は髙楼に上って一心に祈りを捧げたところ、神通力によってそのことを知った釈尊が夜叉に仏法を説き、改心した夜叉は仏教に帰依して、赤ん坊は無事に長者夫婦の元に戻されたそうです。
改心した夜叉が明王になって全ての明王の総帥であることから「大元帥明王」と言われるのです。
我が国への伝来
我が国への伝来は承和6年(839)平安時代前期の僧常暁(じょうぎょう)によって唐から請来されました。
空海から灌頂を受けた常暁は承和5年(838)三論の留学僧として唐に渡り、密教と怨敵・逆臣の調伏、国家安泰を祈る大元帥法を学んで日本に帰国、山城国宇治の法琳寺に我が国で初めて「大元帥明王像」を安置して修法院とすることを請い許されました。
国家鎮護のための大法として嘉祥4年(851)に宮中の常寧殿で大元帥法を初めて行って以来、大元帥法は後七日御修法に準じる扱いとなりました。
大元帥明王の姿
大元帥明王は数ある明王の中で最も恐ろし気な表情をしており、黒青色の身体にドクロの首飾り、手足には蛇が巻き付いています。
一面六臂(顔が一つで手が六本)で三鈷杵、五鈷杵、鈕(ちゅう)、棒、斧(おの)などの武器を取る姿や、一面四臂などの姿で表現されています。
大元帥明王の真言
大元帥明王の真言は
- ノウボウ タリツ タボリツ ハラボリツ シャキンメイ シャキンメイ タラサンダン オエンビ ソワカ
大元帥明王の功徳
大元帥明王は国を護り外敵を防ぎ怨霊や悪霊の降伏に絶大なる効果を発揮しますので、鎮護国家のための修法という意味合いが大きく、軍隊における「大元帥」の称号は「大元帥明王」からきていると言われるほど大きな力を持っています。
大元帥明王が祀られている寺社
- 秋篠寺:奈良市秋篠町757 毎年6月6日の大祭当日のみ公開
- 理性院:京都市伏見区醍醐東大路町22 80年に一回公開
- 太元堂(東寺):京都市南区九条町1 非公開
- 京善寺:大阪市東住吉区桑津3丁目21-9 参拝時に拝観も可能
- 慈光院:富山県小矢部市西町5-6 毎年10月17日の火渡り法要当日のみ開堂
- 田村神社:福島県郡山市田村町山中字本郷135 毎年1月13日と旧暦6月13日に公開。