宝蔵菩薩とは

宝蔵菩薩のイラスト

宝蔵菩薩はサンスクリット名をラトナガルバ(Ratnagarbha)といい、ラトナは「宝」、ガルバは「収納」、「倉庫」で、宝の倉庫という意味を持ちます。

阿弥陀如来の前身

宝蔵菩薩は阿弥陀如来の前身と言われ、悟りを得て如来になるために48の願いを立てたと言われています。

菩薩とは完全なる悟りを得た如来になるために修行している衆生のことですからまだ悟りを得ていませんが、如来に近づいている段階で、自らの修行はもちろんのこと、衆生済度の実践が必要になります。

阿弥陀如来が宝蔵菩薩であった時に立てた衆生済度の願いは我が国の法然や親鸞に影響を与えて浄土教に発展し、日本の仏教思想に多大なる影響を及ぼしたのです。

四十八願とは

「仏説無量寿経」の四十八願とは阿弥陀如来の前身である宝蔵菩薩が如来になるために立てた願いのことです。

四十八願の内容

  1. 無三悪趣の願
  2. 不更悪趣の願
  3. 悉皆金色の願
  4. 無有好醜の願
  5. 宿命智通の願・令識宿命の願
  6. 令得天眼の願・天眼智通の願
  7. 天耳遥聞の願・天耳智通の願
  8. 他心悉知の願・他心智通の願
  9. 神足如意の願・神足智通の願
  10. 不貪計心の願・漏尽智通の願
  11. 必至滅度の願
  12. 光明無量の願
  13. 寿命無量の願
  14. 声聞無量の願
  15. 眷属長寿の願
  16. 離諸不善の願
  17. 諸仏称名の願・諸仏称揚の願・諸仏称讃の願・諸仏咨嗟の願・往相廻向の願・選択称名願・往相正業
  18. 念仏往生の願・選択本願・本願三心の願・至心信楽の願・往相信心の願
  19. 至心発願の願・修諸功徳の願・臨終現前の願・現前導生の願・来迎引接の願・至心発願の願
  20. 至心廻向の願・植諸徳本の願・係念定生の願・不果遂者の願・欲生果遂の願
  21. 具足諸相の願
  22. 還相廻向の願・必至補処の願・一生補処の願
  23. 供養諸仏の願
  24. 供養如意の願
  25. 説一切智の願
  26. 得金剛身の願・那羅延身の願
  27. 万物厳浄の願・所須延身の願
  28. 道場樹の願・見道場樹の願
  29. 得弁才智の願
  30. 弁才無尽の願・智辯無窮の願
  31. 国土清浄の願
  32. 妙香合成の願・宝香合成の願
  33. 触光柔軟の願
  34. 聞名得忍の願
  35. 女人成仏の願・女人往生の願
  36. 聞名梵行の願・常修梵行の願
  37. 作礼致敬の願・人天致敬の願
  38. 衣服随念の願
  39. 常受快楽の願・受楽無染の願
  40. 見諸仏土の願
  41. 聞名具根の願・諸根具足の願
  42. 聞名得定の願・住定供仏の願
  43. 聞名生貴の願・生尊貴家の願
  44. 聞名具徳の願・具足徳本の願
  45. 聞名見仏の願・住定見仏の願
  46. 随意聞法の願
  47. 聞名不退の願・得不退転の願
  48. 得三法忍の願

四十八願の意味

宝蔵菩薩は四十八の願いを全て叶うまでは決して仏にならないという強い意思を持った菩薩です。

  1. 三悪趣である地獄餓鬼畜生のものがいなくなる
  2. 人々や天人が命を終えた後、再び三悪道(地獄、餓鬼、畜生)に戻らない
  3. 人々や天人が真金色に輝く身になる
  4. 人々や天人の姿かたちが皆美しいものとなる
  5. 人々や天人が、宿命通(しゅくみょうつう)を得て、百千億那由他の諸劫の事まで知り尽くすことが出来る
  6. 人々や天人が、天眼通(てんげんつう)を得て、数限りない諸仏の国土を自由自在に見通すことが出来る
  7. 人々や天人が、天耳通(てんにつう)を得て、数限りない諸仏の説法を聞き取り、全てを記憶することができる
  8. 人々や天人が、他心通(たしんつう)を得て、数限りない諸仏国土の人々の心を自在に見抜き知り尽くすことができる
  9. 人々や天人が、神足通(じんそくつう)を得て、数限りない諸仏の国土をまたたく間にとびまわることができる
  10. 人々や天人が、〈漏尽通(ろじんつう)を得て、いろいろと思いはからい、その身に執着するようなことがない
  11. 人々や天人が、正定聚(しょうじょうじゅ)にはいり、必ず悟りを得ることができる
  12. 私の光明に限りがなく、百千億那由他の諸仏の国を照らすことができる
  13. 私の寿命に限りがなく、百千億那由他劫までの長さで尽きるようなことがない
  14. 私の国の声聞の数に限りがなく、三千大千世界の声聞・縁覚たちが、百千劫のあいだ力をあわせて計算し、その数を数え尽くせるようなことがない
  15. 人々や天人の寿命を限りないものにさせる
  16. 人々や天人に、不善のものがいなく、またその名さえない
  17. あらゆる世界の数限りない諸仏たちが、ことごとく私の名をほめたたえる
  18. 全ての人々が心から信じて私の国に生れたいと願い、わずか十回でも念仏して、もし生れることができないようなら、私は決して悟りを開きません
  19. あらゆる人たちが菩提心を起こし、もろもろの善根功徳を修め、ひとすじに私の国に生まれたいと願うなら、その人々の臨終の時、私は多くの聖者たちと、その人の前に現れる
  20. あらゆる人たちが私の名を聞いて、私の国に思いをよせ念仏をとなえる功を積んで、ひたすらに私の国へ生まれたいと願うなら、私はその願いを果たし遂げさせる
  21. 人々や天人が、一人残らず三十二相の仏の姿をまどかに備えられる
  22. 他の国の菩薩達が、私の浄土に生まれたなら、必ず菩薩最高の位に入る
  23. 私の国の菩薩が、仏の威神力をたまわり、諸仏を供養するにあたって、極めて短い時間のうちに、無数の国々にいたりつけるようにしてやることが出来る
  24. 国中の菩薩が、諸仏の前で、供養の徳を現わすにあたり、欲しいと思う供養の品を思いのままに得られる
  25. 国中の菩薩が、あらゆる智慧をもって思いのままにに説法することが出来る
  26. 国中の菩薩が、那羅延のような、どんなことにも負けない堅固な身を得ることが出来る
  27. 国中の人々や天人が用いる一切のものが、みな清らかでうるわしく光輝き、その形は特に優れ、微妙であることはとても計り知れないぐらいにする
  28. 国中の菩薩で、たとえ功徳の少ない者であっても、高さ四百万里の光り輝く菩提樹を見ることができる
  29. 国中の菩薩が、経法をいただいて読誦し、これを人々に説き述べ、さわりのない弁才智慧を得られる
  30. 国中の菩薩が、智慧や弁才に限りがない
  31. 国土が清らかで、光明が十方無量の世界を照らすことが、ちょうど磨き上げたに姿をうつすようにする
  32. 大地より虚空にいたるまで、宮殿、楼閣、池水や川の流れ、樹木や花など、私の国のすべてのものがみな無数の宝と無量の香りからでき、その美しい荘厳は世にこえてすぐれ、ゆかしい香りは方世界に薫じわたり、これを聞くものはみな仏道にいそしむ
  33. 十方世界のあらゆる衆生で、私の光明に照らされこれを身に触れるものは、身も心もやわらいで、人天のそれよりもはるかにこえすぐれる
  34. 十方世界のあらゆる衆生が、我が名を聞いて、涅槃を得るに間違いのない身となり、もろもろの深い智慧をえることができる
  35. あらゆる世界の女性達が、我が名を聞いて、喜び信じ、菩提心を発し、我が身を恥じらう思いになるならばいのちの終わってのちは、再びもとの身にはならない
  36. あらゆる世界の菩薩達が、我が名を聞いて、命が終わってから、常に自利利他の菩薩の行を修め、仏道をなし遂げて仏になることが出来る
  37. あらゆる世界の人々が我が名を聞いて、五体を地になげうつ最高の作法で恭しく礼拝し、よろこび信じて菩薩の行を修すならば、天人たちはこれを敬い慕う
  38. 国中の人々や天人が衣服が欲しいと思ったら、それが直ちに現れ、仏の意にかなった尊い衣服が自然と身につけられる
  39. 国中の人々や天人が受ける楽しみが、煩悩の全くなくなった聖者のようになる
  40. 国中の菩薩が、意のおもむくままに十方の数限りない清らかなる浄土を見たいと思うなら、いつでも願いに応じて、磨き上げられた鏡に顔が映し出されるように、宝樹の中にそれを見ることができる
  41. 他方の国土の菩薩達が、我が名を聞いて、仏のさとりを得るまで、体が完全で不自由でないようできる
  42. 他方の国土の菩薩達は、我が名を聞いて、皆ことごとく煩悩のけがれと束縛とを離れた清らかな三昧の境地をえることでしょう。この三昧にはいると、思いが発れば直ちに無数の諸仏を供養することが出来、その禅定の心を少しも乱すことがない
  43. 他方の国土の菩薩達は、我が名を聞いて、命がおわってから尊い家に生まれられる
  44. 他方の国土の菩薩達は、我が名を聞いて、喜びいさんで菩薩の行を励み、いろいろな功徳を身につけることが出来る
  45. 他方の国土の菩薩達は、我が名を聞いて、皆ことごとく普等三昧の境地を得るでしょう。この三昧にはいって仏になるまで、常に一切の諸仏たちを見ることができる
  46. 国土の菩薩達は、その希望にしたがい、聞きたいと思う法を自然に聞くことが出来る
  47. 他方の国土の菩薩達が、我が名を聞いて、直ちに不退の位にいたることができる
  48. 他方の国土の菩薩達が、我が名を聞いて、直ちに第一、第二、第三法忍と位にいたることが出来ず、諸仏の法をえたうえに、不退転の身になることが出来る

宝蔵菩薩と浄土教

四十八願の中には菩薩としての衆生済度の願いが込められていることが分かります。

浄土宗では「南無阿弥陀仏」の念仏を尊重しますが、それは「仏説無量寿経」の第十八願に「私が仏になるとき、全ての人々が心から信じて、私の国に生まれたいと願い、十回でも念仏して、もし私の国に生まれることができないなら、私は決してさとりを開きません 。ただし、五逆の罪を犯したり、仏の教えを謗るものだけは除かれます」と説かれ、この部分を法然は最も重要だと考え、ただひたすらに念仏することをすすめたのです。

二十五菩薩

二十五菩薩来迎図のイラスト

宝蔵菩薩は阿弥陀如来を先頭にして衆生を浄土に導くための二十五の菩薩の中に含まれていて、亡き人を浄土に導くための往生極楽の来迎図として描かれることが多く、阿弥陀如来の眷属としての菩薩としての仏像も制作されています。

二十五菩薩とは

  • 観世音菩薩
  • 大勢至菩陸
  • 薬王菩薩
  • 藥上菩薩
  • 普賢菩薩
  • 法自在王菩薩
  • 陀羅尼菩薩
  • 白象王菩薩
  • 虚空蔵菩薩
  • 宝蔵菩薩
  • 徳蔵菩薩
  • 金蔵菩薩
  • 光明王菩薩
  • 金剛蔵菩薩
  • 山海恵菩薩
  • 華巌菩薩
  • 日照王菩薩
  • 月光王菩薩
  • 衆宝王菩薩
  • 三昧菩隆
  • 獅子吼菩薩
  • 定自在王菩薩
  • 大威徳菩薩
  • 大自在王菩薩
  • 無辺身菩隆、