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受戒、授戒とは
受戒(じゅかい)とは仏門に入った者に対して戒律を授けることで、戒律を授ける儀式のことを受戒会と言い、戒律を授ける側から見れば授戒(じゅかい)です。
戒名について
仏門に入る者に対して師僧が戒律を授け、戒律を守りますという条件の下で仏弟子としての名前を授けるのが戒名で、法名とも言います。
我が国の仏教では戒名は死者に与えられるものという認識が強く、仏教寺院では死者の葬儀の時に戒名を付けるということで定着していますが、本来は仏門に入ってこれから修行しようとする者に対して与えられるのが戒名の本来の意義です。
一般的には生前中に戒名を頂くことを「生前戒名」もしくは「逆修」と言って死者に与える戒名とは区別しています。
在家者の受戒
五戒は五つの戒から成り立ち、最も重要度の高い順から並びます。
- 不殺生戒(ふせっしょうかい)…生き物を故意に殺してはならない
- 不偸盗戒(ふちゅうとうかい)…他人のものを盗んではいけない
- 不邪婬戒(ふじゃいんかい)…不道徳な性行為を行ってはならない
- 不妄語戒(ふもうごかい)…嘘をついてはいけない
- 不飲酒戒(ふおんじゅかい)…酒類を飲んではならない
出家者の受戒
十戒とは仏教に於いて出家者の見習い男性[沙弥](しゃみ)と、見習い女性[沙弥尼](しゃみに)が守る十項目の戒律のこと。
未成人で出家したら沙弥、沙弥尼になり、その場合責任もって面倒をみる阿闍梨と、戒律を授ける戒師の元で戒律を受けます。
沙弥の十戒とは
- 不殺生戒…生き物を故意に殺してはならない
- 不偸盗戒…他人のものを盗んではいけない
- 不婬戒…性行為をしない
- 不妄語戒…嘘をついてはいけない
- 不飲酒戒…酒類を飲んではならない
- 不著香華鬘不香塗身戒…化粧や香水、宝飾品などで身を飾らない
- 不歌舞倡妓不往観聴戒…歌や音楽、踊りを鑑賞してはいけない
- 不坐高広大床戒…立派な寝具や坐具でくつろがない
- 不非時食戒…正午以降に食べ物を摂ってはいけない
- 不捉持生像金銀宝物戒…お金や金銀・宝石類など、資産となる物を所有しない
具足戒とは
大人の人が出家する場合には具足戒を受ける必要があります。
受戒する僧侶には、
- 責任を持って指導する和尚一人
- 受戒の儀式を主催する羯磨阿闍梨一人
- 受戒する人に問題がないか調査する教授阿闍梨一人
- 立ち会う僧侶七人
の合計十人の僧侶が戒壇上に立って儀式を行います。
具足戒とは「完全に備わった戒」という意味で、釈迦が制定したとされる戒です。
戒の内容は四分律(しぶんりつ)、五分律(ごぶんりつ)、十誦律(じゅうじゅりつ)、摩訶僧祇律(まかそうぎりつ)、根本有部律(こんぽんうぶりつ)などから知ることが出来ます。
出家者の男性、比丘が守るべき戒律は250戒、出家者の女性、比丘尼が守るべき戒律は348戒あって、生活の規律の細かいところまで決められていますが、そのうち四波羅夷法(しはらいほう)と言って破戒するとただちに教団から追放となり、再出家も許されないという四つの戒について説明します。
- 婬戒…性行為をしない
- 盗戒…他人のものを盗んではいけない
- 殺戒…生き物を故意に殺してはならない
- 妄語戒…嘘をついてはいけない
釈迦の在世中は特に戒律などはなく、誰でも出家出来ていましたが、出家者にとって戒律が出来たのは、釈迦の教団が出来てから十三年目のことで、ある事件がきっかけになったそうです。
それは家系を絶やさないでほしいと母親に泣きつかれた比丘が、出家する前の妻と子供を作る行為をなすという事件のことでした。
それに対して釈迦は、「たとえ毒蛇の口の中に男根を入れることがあっても、女根の中に入れてはならない」とその比丘を呵責し、ここに初めての禁戒である淫戒(いんかい。淫をおこなってはならない)が制定されたのです。
この戒があるために我が国でも明治時代までは僧侶の妻帯は許されず、子供をもらってきて後継者として育てたり、弟子として入門した小僧を育成して後継者にしていたのです。
高野山で「菩薩十善戒」を受けよう
高野山にある高野山真言宗大師教会では「菩薩十善戒」の授戒が毎日行われていて、誰でも受けることが出来ます。
仏門の世界に入るための儀式を受けるような機会は普通には無いものです。
弘法大師との御縁を頂けるということはとても有難いことです。
仏教は生活に役立つ教えで、実践することが大切なこと、そのためには戒を受けてその意味を理解して深めていけば人生が豊かになります。
高野山大師教会での受戒
高野山大師教会では毎日
9:00・10:00・11:00・13:00・14:00・15:00・16:00
の時間で受戒式を行っており、誰でも菩薩十善戒を受けることが出来ます。
(10分前に受付締切、定員15名)
菩薩十善戒とは
- 不殺生(ふせっしょう)…生きものを殺さない
- 不偸盗(ふちゅうとう)…盗まない
- 不邪淫(ふじゃいん)…淫らな行いをしない
- 不妄語(ふもうご)…嘘をつかない
- 不綺語(ふきご)…お世辞などを言わない
- 不悪口(ふあっく)…悪口を言わない
- 不両舌(ふりょうぜつ)…二枚舌を使わない
- 不慳貪(ふけんどん)…むさぼらない
- 不瞋恚(ふしんに)…怒らない
- 不邪見(ふじゃけん)…間違ったものの見方をしない
これだけの戒を守ることを誓い、最後に有難い説法を聞きます。
最後に受戒の証である「菩薩戒牒」を頂きます。
諸堂共通内拝券を買っておけば大師教会で使えます。
1枚2,500円(2023年7月現在)で有効期限は2日間、下記施設にて利用可能です。
- 金剛峰寺
- 大師教会本部→「受戒」か「写経」のどちらかで利用できます
- 大塔
- 金堂
- 徳川家霊台
- 奥の院
最後奥の院にて記念品の授与していただけます。
高野山観光協会の各案内所で購入可能