阿字とは
阿字は梵字の一番最初の字であり日本語で五十音の最初の「あ」英語でアルファベットの最初の「A」に相当し、大日如来を表し、全ての根源、本質という意味です。
阿字のある所
阿字は寺院やお墓に行けば見ることが出来ます。
お墓にある五輪の塔
五輪の塔は家の御先祖様全てをお祀りするもので、御影石で作られた小型の五輪の塔は一般的な霊園や集落の共同墓地などで見かけることがあります。
高野山奥の院参道には何十万基もの五輪の塔が祀られていて、高野山で供養の御縁を頂ければ末代までお大師様に守って頂けるという信仰が今でも続いています。
お墓や寺院でよく見かける五輪の塔はキャ・カ・ラ・バ・アの梵字が刻んでありますが、それぞれの梵字は五大である地・水・火・風・空を表しています。
お墓の塔婆
真言宗や天台宗ではお墓の塔婆の上の方にキャ・カ・ラ・バ・アの梵字を書くことが多く、法事をする度に新しい塔婆をお墓に持って行き、古い塔婆と交換します。
塔婆はサンスクリット語で「ストゥーパ」と言い、釈迦の遺骨を祀るための仏塔のことで、在家の者が仏塔を寄進することは大いなる功徳になるので、その形を模した塔婆をお墓に立てることで功徳を積むのです。
位牌の表
真言宗や天台宗では位牌の戒名の上に阿字を彫ってあることが多く、大日如来に守られて宇宙の根源に還っていくことを表しています。
阿字本不生とは
阿字には本不生(ほんぶしょう)という意味があって、全ての根源や本質は元々生まれていないので消滅することも無く、「不生不滅」の「空」を表しています。
如来の悟りの世界とは生まれ変わり死に変わりを繰り返す六道の輪廻の世界を脱した永遠不滅の世界であり、何時の時代であっても何処に居ても変わることの無い不変の真理の世界なのです。
阿弥陀如来の不変の真理の世界は極楽浄土であり、大日如来の浄土は密厳浄土と言われています。
阿吽について
寺院の入り口の門に祀られた仁王像(金剛力士)は口を開けた阿形と口を閉じた吽形の二体で成り立っていますが、神社の狛犬や沖縄のシーサーも阿形と吽形の一対で成り立っていることが分かります。
「阿」は梵字の最初で「吽」は梵字の最後であること、日本語の五十音も「あ」で始まり「ん」で終わることからも「阿吽」は宇宙の始まりから終わりまでを表すとされます。
寺院に参拝する時に私達は阿吽の仁王像の間を通って参拝することから、この世に生きている者として始まりと終わりの間に居ることを意識し、私達にはやがて必ず終わりが来るということを説いているのです。
私達が阿字本不生の領域に到達することは困難なことですが、人として生きている以上必ず始まりと終わりがあること、そして終わりは次の始まりにつながっていることを意識しながら今の自分が為すべきことを思い、仁王門をくぐりたいものです。