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薬師如来とは
薬師如来は薬師瑠璃光如来、医王如来とも言われ、手には薬壺を持ち、現世での民衆の救済活動をする如来です。
薬師如来の由来
梵名をBhaiṣajyaguru(バイシャジヤグル)と言い、永徽元年(650年)玄奘訳「薬師瑠璃光如来本願功徳経」には、東方瑠璃光浄土の教主である薬師如来が菩薩の時に十二の大願を発して瑠璃光をもって民衆の諸病を治し悟りに向かわせるなどの誓いを立てて如来になったと説かれています。
薬師如来の功徳
薬師如来は手に薬壺を持っていて医王如来と言われることから、病気平癒の仏として有名で、目治薬師(めなおしやくし)とも言われ、眼病に対して御利益があると言われています。
薬師如来の姿
薬師如来は右手を施無畏の印にし、左手を与願の印にして薬壺を持つことが多く、薬壺が無ければ釈迦如来と区別することが出来ません。
薬師如来の眷属
薬師如来は日光菩薩と月光菩薩を脇侍とし、天衣甲冑を身に着けた十二神将を脇侍とすることもあります。
薬師如来信仰
薬師如来は十二請願を立てて仏になったのですから、その誓いの一つ一つが薬師如来の仕事のようなものです。
十二請願とは
薬師如来の十二請願は
- 自身の光明によって一切衆生に三十二相八十種好を体得させる
- 光明を以て種々の事業を成就させる
- 智慧方便をもって衆生を受用させる
- 邪道を行ずる人を菩薩道に引き入れて大乗の悟りを開かせる
- 衆生を清浄なる境地に引き入れて悪趣に堕ちないようにする
- 六根による諸病のある者が名を聞けば治る
- 諸病のために苦しむ者の病を悉く取り除く
- 女性を男性に変えて成仏させる
- 衆生を解脱させ悟りを得させる
- 災難や刑罰を免れて解脱させる
- 飢える者に食を与え法の満足も与える
- 衣服の無い者には荘厳の服を与える
十二神将とは
十二神将は薬師如来の十二請願に応じて昼夜の十二の時、十二の月、または十二の方角を守る役目をしています。
- 宮毘羅大将(くびら)
- 伐折羅大将(ばさら)
- 迷企羅大将(めきら)
- 安底羅大将(あんちら)
- 頞儞羅大将(あにら)
- 珊底羅大将(さんちら)
- 因達羅大将(いんだら)
- 波夷羅大将(はいら)
- 摩虎羅大将(まこら)
- 真達羅大将(しんだら)
- 招杜羅大将(しょうとら)
- 毘羯羅大将(びから)
七仏薬師
義浄訳の「薬師瑠璃光七仏本願功徳経」(七仏薬師経)や、達磨笈多訳の「薬師如来本願経」には薬師如来を中心とした七仏の本願と浄土が説かれています。
- 善名称吉祥王如来(ぜんみょうしょうきちじょうおうにょらい)
- 宝月智厳光音自在王如来(ほうがつちごんこうおんじざいおうにょらい)
- 金色宝光妙行成就王如来(こんじきほうこうみょうぎょうじょうじゅおうにょらい)
- 無憂最勝吉祥王如来(むうさいしょうきちじょうおうにょらい)
- 法海雲雷音如来(ほうかいうんらいおんにょらい)
- 法海勝慧遊戯神通如来(ほうかいしょうえゆげじんつうにょらい)
- 薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)
十三仏として
十三仏とは人の死後33年間までを案内する仏のことで、死後の世界の裁判官として中国で古来より信仰されていた十王の思想が発展したと言われています。
薬師如来は人の死後、七七日を案内する仏になります。
- [十三仏] [裁判官] [法事] [命日から]
- 不動明王 秦広王(しんこうおう) 初七日 7日目、6日後
- 釈迦如来 初江王(しょこうおう) 二七日 14日目、13日後
- 文殊菩薩 宋帝王(そうていおう) 三七日 21日目、20日後
- 普賢菩薩 五官王( ごかんおう) 四七日 28日目、27日後
- 地蔵菩薩 閻魔王 (えんまおう) 五七日 35日目、34日後
- 弥勒菩薩 変成王 (へんじょうおう) 六七日 42日目、41日後
- 薬師如来 泰山王( たいざんおう) 七七日 49日目、48日後
- 観音菩薩 平等王 (びょうどうおう) 百か日 100日目、99日後
- 勢至菩薩 都市王 (としおう) 一周忌 2年目、1年後
- 阿弥陀如来 五道転輪王(ごどうてんりん) 三回忌 3年目、2年後
- 阿閦如来 蓮華王 (れんげおう) 七回忌 7年目、6年後
- 大日如来 祇園王 (ぎおんおう) 十三回忌 13年目、12年後
- 虚空蔵菩薩 法界王( ほうかいおう) 三十三回忌 33年目、32年後
薬師如来の真言
薬師如来の真言には小咒、中咒、大咒があります。
小咒
- オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ
- (oṃ huru huru caṇḍāli mātaṅgi svāhā)
中咒
- オン ビセイゼイ ビセイゼイ ビセイジャサンボリギャテイ ソワカ
- (Oṃ bhaiṣajye bhaiṣajye bhaiṣajyasamudgate svāhā)
大咒
- ウマク バギャバテイ バイセイジャ クロ ベイルリヤ ハラバ アラジャヤ タタギャタヤ アラカテイ サンミャクサンボダヤ タニヤタ オン バイセイゼイ バイセイゼイ バイセイジャサンボリギャテイ ソワカ
- (Namo bhagavate bhaiṣajyaguru vaiḍūryaprabharājāya tathāgatāya arhate samyaksambuddhāya tadyathā oṃ bhaiṣajye bhaiṣajye mahābhaiṣajya-samudgate svāhā)
瑠璃光浄土
阿弥陀如来の西方極楽浄土に対して薬師如来の浄土は東方瑠璃光浄土です。
瑠璃光浄土とは
瑠璃とは仏の世界の荘厳に使われる宝石のことで、仏の世界の宮殿は金、銀、金、銀、瑠璃(るり)、玻璃(はり=水晶)、車渠(しゃこ=貝)、珊瑚(さんご)、瑪瑙(めのう)などの宝石でできていると言われています。
瑠璃とはエメラルド、アクアマリンなどの青緑色の宝石が放つ光のことで、薬師如来が放つ光です。
東の空に陽が昇るときに青緑色の澄んだ光を放つその先にあるのが東方の瑠璃光浄土なのです。