金剛頂経とは
金剛頂経はサンスクリット語で ヴァジュラシェーカラ・スートラ/タントラ(Vajraśekhara Sūtra/Tantra)と言い、大乗仏教の経典であり、真言宗では大日経と共に根本経典として「両部の大経」と言います。
金剛頂経の由来
金剛頂経は7世紀の中頃南インドで成立し中国の不空三蔵がインドに渡って西暦746年に将来したものが金剛頂一切如来真実摂大乗現証大教王経(大教王経)です。
不空三蔵は金剛智三蔵より真言の法を授かった僧で、西域生まれでインド、スリランカから経典を持ち帰り多くの経典を翻訳した伝持の第四祖、付法の第六祖になります。
その後遣唐使として唐に派遣された弘法大師空海が日本に持ち帰ることになります。
大日経が大日如来の理性に於ける平等な世界の胎蔵界を説いているのに対して、金剛頂経では如来の智慧の世界である金剛界を説いています。
金剛頂経の構成
不空の「金剛頂経瑜伽十八会指帰」によれば全十八会、十万頌から構成されています。
十八会の構成
- 初会 – 「一切如来真実摂大乗現証大教王」(『真実摂経』『大教王経』)
- 第二会 – 「一切如来秘密主瑜伽」
- 第三会 – 「一切経集瑜伽」
- 第四会 – 「降三世金剛瑜伽」
- 第五会 – 「世間出世間金剛瑜伽」
- 第六会 – 「大安楽不空三昧耶真実瑜伽」
- 第七会 – 「普賢瑜伽」
- 第八会 – 「勝初瑜伽」
- 第九会 – 「一切仏集会挐吉尼戒網瑜伽」
- 第十会 – 「大三昧耶瑜伽」
- 第十一会 – 「大乗現証瑜伽」
- 第十二会 – 「三昧耶最勝瑜伽」
- 第十三会 – 「大三昧耶真実瑜伽」
- 第十四会 – 「如来三昧耶真実瑜伽」
- 第十五会 – 「秘密集会瑜伽」
- 第十六会 – 「無二平等瑜伽」
- 第十七会 – 「如虚空瑜伽」
- 第十八会 – 「金剛宝冠瑜伽」
内容について
内容としては大日如来が一切義成就菩薩(いっさいぎじょうじゅぼさつ=釈尊の事)の問いに対して悟りの内容を示して、悟りに至る実践法を説いていて、実践法の中心となるのが五相成身観(ごそうじょうじんかん)になります。
五相成身観とは五段階に分かれた観法で、月輪や金剛杵などを観想することによって、自分自身が本来清浄であり、仏の智慧と合一するための方法です。
理趣経について
真言宗では常用経典として日常的に唱えられている「理趣経」は第六会の「大安楽不空三昧耶真実瑜伽」に含まれる「理趣広経」とよばれる文書の略本です。
弘法大師空海が請来した「大楽金剛不空真実三摩耶経、般若波羅蜜多理趣品」を根本経典である「理趣経」としています。
密教は曼荼羅の思想によってこの宇宙の全ての物を肯定し、本来は穢れの無い清浄なものとして捉え、欲望も愛欲も怒りの心も全てを肯定した上で、それらの行動の本質を見抜き、価値を転換することでありのままの姿で仏になることが出来ると説くのが「即身成仏」であり、この世で肉体を持ったままで成仏出来ると説くのです。