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三鈷杵とは
三鈷杵とはチベット仏教や日本の真言宗、天台宗、禅宗などで用いられる金剛杵と言われる法具の一種で、煩悩を滅するために使われる両側が三つに分かれた宗教用具のことです。
三鈷杵の由来
古代インドでは神々が様々な武器を持ち、悪神や鬼などと戦っていましたが、手に持った武器は相手を殺傷する武器であったものが密教では人間の心の中にある煩悩を滅ぼす象徴としての武器になることで、法具に発展し、その形に深遠なる意味が込められるようになりました。
三鈷杵は行者と大日如来が合一するための法具であり、行者の身口意の三業が大日如来の身口意の三密につながるためのものです。
行者の三業とは体の行動、口で発する言葉、心で思うことです。
大日如来の三密とは簡単に言えば存在、説法、意識のことです。
三鈷杵を持って修法することにより、大日如来と一体化することを目指します。
三鈷杵の形
三鈷杵の形には深い意味があります。
大日如来の目
三鈷杵の中央には大日如来の目があり、大日如来が瞑想している時の目であると言われています。
この部分を持つことによって大日如来との一体化が実現するのです。
三鈷の部分
三鈷杵の三鈷の部分である鉾は尖った形をしていて、両側に同じ形の3本の爪になっていますが、武器としては煩悩を打ち砕くという意味で、法具としては行者の身口意の三業が大日如来の身口意の三密につながるためのものです。
そして三つの鉾が内向きに包み込むようになっているのは、三密と三業を一体化させて制御することを表しています。
飛行三鈷杵とは
飛行三鈷杵は「ひぎょうさんこしょ」と言って弘法大師空海が遣唐使として唐に留学し、都長安にある青龍寺の恵果阿闍梨から密教の教えを全て受けて日本に帰るために明州の浜に居た時に「日本で密教を広めるのにふさわしい地を示したまえ」との祈りを込めて東に向かって三鈷杵を投げたら紫の雲に乗って日本に向かって飛んで行ったと言われる三鈷杵のことです。
この三鈷杵を投げて10年後に日本の地で、弘法大師空海は高野、丹生都比売(にうつひめ)の両明神に導かれて、たどり着いたのが高野山の地であり、松の木に掛かっていたことから「三鈷の松」と言われるようになったそうです。
三鈷杵を持った仏
三鈷杵を持った仏、仏像としてよく知られるのはやはり弘法大師空海です。
弘法大師の石像は「お大師様」として日本全国にお祀りされており、そのほとんどが五鈷杵を持っていますが、三鈷杵の場合もあります。
三鈷杵の使い方と効果
密教では護摩行の時に祭壇の上に置いた前具の中にある三鈷杵を使いますが、護摩行は加行と言って行を伝授された者だけが行うことが出来ます。
やすらか庵ではお焚き上げ供養の時にも三鈷杵を使います。
護摩行として
護摩行は本尊の不動明王と交流するための行であり、不動明王は大日如来の化身であることを思えば大日如来という大宇宙に匹敵する大いなる如来に少しでも近づけて、不動明王と一体化するためには様々な法具と供物、そして儀式を伴います。
護摩行の中でも三鈷杵を使います。
護身用として
密教の法具は使い方を知らなくても普通にネットショッピングで買うことが出来ますし、護身用として持っていても構いません。
私達の世界は大宇宙へと繋がっていますし、大宇宙には大きな力が働いていて、その力を感じた時に、如何に私達の存在が小さいものであるかということを知らされるのですが、そういったことを感じ取るために法具があるのであって、真理の世界があるということに気付くためであれば護身用としてでも構いません。
宗教、そして法とのご縁はというものは、案外こういう所にもあるものです。
先人達が大宇宙の大きな力と繋がるために見出した形は見るだけでも美しいもので御座いますし、道具が不思議な力を持つということを実感してみて下さい。