灌頂とは
灌頂(かんじょう)とは密教に於いて頭頂部に水を注いで諸仏や曼荼羅の諸尊と縁を結び、正統な継承者として認めるための儀式のこと。
灌頂の由来
元々はインドに於ける王の即位や立太子の時に行われる儀式で、即位灌頂と呼ばれていたものでした。
即位灌頂では四大海(しだいかい)の水を頭頂に注いで四大海に至る全ての世界の掌握を表す儀式なのです。
四大海とは須弥山(しゅみせん)の四方にあるという大海のことです。
我が国での灌頂
我が国では天台宗の開祖である最澄が延暦24年(805)に高雄山の神護寺で灌頂を行ったのが最初であるとされ、最澄は遣唐使として唐に渡った際に龍興寺の順暁から「秘密灌頂」を受けていました。
後になって真言宗の開祖である空海が唐から請来した金剛界と胎蔵界の両部の密教が優れていることを知り、空海から結縁灌頂を受けています。
灌頂の種類
密教の灌頂には結縁(けちえん)灌頂、受明(じゅみょう)灌頂、伝法(でんぽう)灌頂の三種類があります。
結縁灌頂
出家や在家に関わらず受けることが出来て、曼荼羅の中のどの仏に守り本尊になってもらうかを決める儀式のこと。
目隠しして曼荼羅の上に華を投げて、落ちた場所の仏と縁を結ぶので投華(とうか)灌頂とも言います。
受明灌頂
弟子として入門し、修行して密教を本格的に学ぶ人が受ける儀式で、弟子灌頂とも言います。
「十四根本堕」や「八支粗罪戒」等の三昧耶戒を授かるので許可(こか)灌頂とも言います。
伝法灌頂
阿闍梨(あじゃり)という密教の指導者の位を授ける儀式で、金剛界と胎蔵界の両部を授けるので金胎両部伝法灌頂とも言い、阿闍梨灌頂とも言われます。
十八道次第を基本とした四度加行(しどけぎょう)の修行を終えた者だけが受けることが出来る灌頂で、密教の奥義が伝授され、弟子を持つことが許されます。
付法の八祖
真言密教の付法の八祖とは大日如来を教祖とする密教の秘密法流を灌頂受法にて相承した祖師のことです。
付法の八祖の概略
- 大日如来(だいにちにょらい)…大宇宙の根源、密教の教主
- 金剛薩埵(こんごうさった)…大日如来の直弟子で説法を聞き衆生に伝える
- 龍猛菩薩(りゅうみょうぼさつ、ナーガールジュナ)…金剛薩埵から密教経典を授かる
- 龍智菩薩(りゅうちぼさつ、ナーガボーディ)…龍猛から密教を伝授される
- 金剛智三蔵(こんごうちさんぞう)…インドで龍智から密教を学んで唐に帰り「金剛頂経」を伝える
- 不空三蔵(ふくうさんぞう)…唐の長安で金剛智に師仕し「金剛頂経」を翻訳
- 恵果阿闍梨(けいか)…中国生まれ。金剛界・胎蔵界両部の密教を受け継ぐ
- 弘法大師…恵果阿闍梨より金剛界・胎蔵界両部の密教を受け継ぎ日本に伝える
我が国の密教僧は弘法大師のからの灌頂の流れを受けて活動しているのであって、弘法大師の秘密の教えを受け継ぎ、更に歴史を遡れば大日如来の教えを受けて活動しているということになるのです。