目次
十善戒とは
十善戒とは仏教に於ける十悪を否定する形にした戒律のことで、不殺生、不偸盗、不邪淫、不妄語、不綺語、不悪口、不両舌、不慳貪、不瞋恚、不邪見の十の戒律。
十善戒の由来
「華厳経」十地品、第二の「菩薩住離垢地」で勧められる、菩薩が如来になるためになすべき十の戒めとして説かれています。
菩薩は仏としての最高位である如来になるために修行していて、十善戒を極限まで実践することによって如来になるのです。
江戸時代の真言宗の慈雲尊者によって広められました。
十善戒は身口意業
私達の行いには、体でする行いと口を使った言葉による行い、更には心で思う行いがあり、仏教では身口意業(しんくいごう)と言い、三業(さんごう)とも言います。
十善戒は身と口と心の行いを清浄に保つための戒律になっています。
身業
身業とは体による行いのことです
- 不殺生(ふせっしょう)…故意に生き物を殺さない
- 不偸盗(ふちゅうとう)…他人の物を盗まない
- 不邪淫(ふじゃいん)…不道徳な性行為を行なわない
口業
口業とは口から発する言葉のことです
- 不妄語(ふもうご)…嘘をつかない
- 不綺語(ふきご)…飾り立てた言葉を話さない
- 不悪口(ふあっく)…悪口を言わない
- 不両舌(ふりょうぜつ)…二枚舌を使わない
意業
意業とは心で思うことです
- 不慳貪(ふけんどん)…貪らない
- 不瞋恚(ふしんに)…怒らない
- 不邪見(ふじゃけん)…間違った見方をしない
十善戒の内容
十善戒は○○しませんという事が基本になっています。
不殺生
不殺生 (ふせっしょう)とは生き物を故意に殺さないことです。
踏みつぶさない、叩かない、更には食べないということも含まれますので、本来の仏教では出家者は肉食しないことになっていますが、我が国の仏教では罪に問われません。
動物の毛皮や革製品、剥製の利用なども殺生につながっているのです。
殺生は相手の生きる権利を奪ってしまうことであり、最大の苦しみを伴うものです。
仏教では全ての生き物を慈しむことを説きます。
不偸盗
不偸盗 (ふちゅうとう)とは他人の物を盗まないことで、無断で使うこともいけませんし、会う約束をして遅刻したり約束を忘れることも他人の時間を盗むということになります。
仏教では人の物を欲しがらない清楚な生活を説きます。
不邪淫
不邪淫 (ふじゃいん)とは不道徳な性行為を行ってはならないということで、不倫などの道徳に反する性行為はいけませんし、本来の仏教では出家者は妻帯は教団追放ということになっていますが、我が国の仏教では肉食同様に罪に問われません。
仏教では欲望の誘惑に惑わされない静かな心を説いています。
不妄語
不妄語 (ふもうご)とは嘘をついてはいけないということで、嘘をつけばそれを隠すために更なる嘘をつき、次第に大きな罪になってしまいます。
仏教では嘘のない正しい言葉を使うように説かれています。
不綺語
不綺語 (ふきご)とは飾り立てた言葉を使わないということで、相手に気に入ってもらいたい、注意を引きたい時などに心にもないことを言って相手を褒めたりしますが、嘘をつくことになってしまいます。
仏教では真実の正しい言葉を使うように説かれています。
不悪口
不悪口 (ふあっく)とは乱暴な言葉や悪口を言わないということで、人の悪いことを言うことは自らの心も汚すことに繋がります。
仏教では他人の悪口をいうことの無益さを説かれています。
不両舌
不両舌 (ふりょうぜつ)とは二枚舌を使わないということで、二枚舌とはその場の状況によって違うことを言い、嘘をついて騙すことで、コロコロという事が変わる人のことで、責任逃れのために嘘を言っても罪の意識の無い人です。
仏教ではいつも変わらぬ正しい言葉を発することを説かれています。
不慳貪
不慳貪 (ふけんどん)とは貪らないことで、持っているのにまだ欲しい、人の物まで欲しいという貪りの心は執着となって心の中を支配してしまいます。
仏教では欲張らない心を説きます。
不瞋恚
不瞋恚 (ふしんに)とは怒らないことで、メラメラと燃える怒りの心は静かな心を乱して正しい判断力を失くしてしまい、更なる相手の怒りを買い、争いや戦争になってしまいます。
仏教では慈しみに満ちた静かなこころを説きます。
不邪見
不邪見 (ふじゃけん)とは仏法に反する誤った見方をすることで、正しい法をゆがめてしまったり、更には多くの人を引き込んだりすることは多くの人を苦しめることに繋がってしまいます。
仏教では正しい法を観て実践することを説きます。
十善戒を行うには
十善戒は仏教に於いて生活の基本となる規律ですから守ることが修行になります。
仏教の修行とは
仏教は魂を向上させることを説き、そのための実践法も説きますが、仏門に入るにあたって守らなければいけないことがあり、それが十善戒なのです。
しかしただ守れば良いというのではなくて、真の意味を理解しなければいけません。
その意味を理解することで仏教がどういう宗教であるのかが分ってくるのです。
一つ一つの戒律には深い意味が込められていて、それらは全て仏の心につながっているのです。
実行してみましょう
戒と言うものは仏門に入る人が師僧から受けるもので「受戒」という儀式を伴うのですが、五戒や十善戒という戒は誰が守っても自由ですから、仏教というものを肌で感じて実践するために是非挑戦してみて下さい。
真言宗の毎日行うお勤めである勤行には十善戒の内容が入っていますので、毎日お唱えすればより一層身近になります。
不殺生戒などは厳密に守ろうとすれば本当に難しいもので、魚や肉を食べることはもちろんのこと、ゴキブリに殺虫剤をかけたりすることまで真面目に考えなければいけません。
しかし仏教の根本には仏の慈悲があり、全ての生き物に対して慈しみの心を持つことが求められているのです。
戒を守ることで日常生活の普段何気ない行いに至るまで何かしらの「気付き」があるはずで御座います。