愛染明王とは
愛染明王とは愛欲煩悩の赤で体を染め、それがそのまま菩提であることを覚らせる密教の明王です。
愛染明王の由来
愛染王とも言われる愛染明王はサンスクリット語でラーガラージャ(Rāga-rāja)と言い、「ラーガ」は赤、情欲、愛欲、愛染の意味で、「ラージャ」は王の意味になります。
しかしながらインドの仏典に出てくることの無い神でもあります。
大日如来に教えを受けた菩薩で、真言宗の付法の八祖の中では大日如来に続いて第二祖の金剛薩埵の変化身と言われています。
弘法大師空海によって我が国に伝えられたと言われています。
愛染明王の役割
釈迦は悟りを得るために煩悩を捨てることを説きましたが、俗世間で暮らす凡夫にとって煩悩は捨て難いものであり、特に愛欲に関しては人間の根本的な本能として最も捨て難い欲望なのです。
愛染明王は愛を全身で表現した神として、赤い色の身体は燃え盛る情熱を表し、愛欲から離れることの出来ない衆生に対して、その本能を否定することなく悟りに向かうエネルギーに振り向けるのが愛染明王の役割です。
愛欲と愛
人間世界に男と女が居る限り愛欲が無くなることはありません。
愛欲があるからこそ人類が消滅することなく続いている訳で、もし人類が消滅してしまったら六道の中の人間世界が無くなってしまうのです。
私達が人間世界に生まれてくるチャンスが無くなってしまったら、仏法に巡り合えて修行するチャンスまで無くなってしまうのです。
密教では愛欲そのものを否定しません。
人間が生まれながらに持っている本能だからです。
むしろ愛欲は清浄なものと説かれますが、仏の世界では欲のない愛に溢れているのです。
「愛欲」は「愛」に昇華されますと「悟り」になるのです。
「愛」の原点は「愛欲」であり「愛欲」があるからこそ「愛」に気付くことが出来るのです。
愛染明王はその名前と恋を射止める弓矢を持っていることから、恋愛成就、家庭円満の神として信仰され、愛欲を否定しないことから水商売の女性の信仰の対象にもなっています。
愛染明王十二大願と功徳
愛染明王が一切衆生を救済するために興した十二の願いはそのまま愛染明王の功徳になります
- 智慧の弓と方便の矢で衆生に幸運を授ける
- 悪しき心を加持して衆生に善果を授ける
- 貪り・怒り・愚かさの三毒の煩悩を打ち砕く
- 衆生の諸々の邪まな心を正見に向かわせる
- 他人との争いごとの悪縁を断つ
- 諸々の病苦や、天災の苦難を取り除く
- 貧困や飢餓の苦悩を取り除く
- 悪魔や鬼神・邪神による苦し、厄を払う
- 子孫の繁栄と、家運の上昇、信心する人の一家を守る
- 前世の悪業の浄化と死後の極楽往生
- 女性に良い縁を結び、結婚後は善根の子供を授ける
- 女性の出産の苦しみを和らげ、子供に福徳と愛嬌を授ける
愛染明王の真言
愛染明王の真言は
- オン・マカラギャ・バゾロウシュニシャ・バザラサトバ・ジャク・ウン・バン・コク
- ウン・タキ・ウン・ジャク (一字心明)
- ウン・タキ・ウン・ジャク・シッジ