目次
観音菩薩とは
観音菩薩とは悟りの世界である如来になるために修行中の菩薩と言われる仏のことで、観自在菩薩、救世菩薩などの別名があり、多くの寺院で広く信仰されている仏です。
観音菩薩の由来
法華経ではアヴァローキタスヴァラ(avalokitasvara)と記述された仏であり、観察された(avalokita)、音・声(svara)という言葉の合成なので、光世音、観世音、観世音自在などと訳されました。
観世音菩薩の省略した呼び方が観音菩薩となります。
観音菩薩の功徳
観音菩薩には様々な変化身があることから仏像としての作例も多く、寺院では観音菩薩が本尊として祀られている事が多く、浄土信仰と併せて墓地や霊園にお祀りされることが多いものです。
また大きな観音菩薩像が建立されていることもあって、霊園などで身近な存在として見ているものです。
観音菩薩は死者の供養的な要素が強いですが、菩薩として様々な形に変身して私達を救ってくださるということから、日常的な礼拝の対象としても信仰され、私達の悩み苦しみを取り去ってくれるという功徳があります。
観音信仰
妙法蓮華経の25番目の経典で「妙法蓮華経観世音菩薩普門品」は「観音経」とも言われ、観音菩薩の名前の由来と功徳を説きます。
「般若心経」の冒頭に出てくる観自在菩薩は、般若の智慧の象徴となっています。
浄土教で唱えられる「観無量寿経」では阿弥陀如来の脇侍として観音菩薩は勢至菩薩と共にお祀りされます。
普門示現とは
観音菩薩がこの世の民衆を救済するのに様々に姿形を変えて現れることを普門示現(ふもんじげん)と言います。
法華経「観世音菩薩普門品第二十五」には観音菩薩が33の姿に変身すると書かれていて、「三十三応現身」と言います。
三十三応現身の詳細
観音菩薩の三十三応現身と三十三観音との関連を示します。
- 仏身(ぶっしん)-青頸(しょうきょう)観音
- 辟支仏身(びゃくしぶつしん)-水月観音
- 声聞身(しょうもんしん)-持経(じきょう)観音
- 梵王身(ぼんおうしん)-徳王観音
- 帝釈身(たいしゃくしん)-葉衣(ようえ)観音
- 自在天身(じざいてんしん)-瑠璃観音
- 大自在天身(だいじざいてんしん)-普悲(ふひ)観音
- 天大将軍身(てんだいしょうぐんしん)-威徳(いとく)観音
- 毘沙門身(びしゃもんしん)-阿摩提(あまだい)観音
- 小王身(しょうおうしん)-蓮臥(れんが)観音
- 長者身(ちょうじゃしん)-衆宝(しゅうほう)観音
- 居士身(こじしん)-六時観音
- 宰官身(さいかんしん)-一葉観音
- 婆羅門身(ばらもんしん)-合掌観音
- 比丘身(びくしん)-白衣(びゃくい)観音
- 比丘尼身(びくにしん)-白衣(びゃくい)観音
- 優婆塞身(うばそくしん)
- 優婆夷身(うばいしん)
- 長者婦女身(ちょうじゃぶにょしん)-馬郎婦(ばろうふ)観音
- 居士婦女身(こじぶにょしん)
- 宰官婦女身(さいかんぶにょしん)
- 婆羅門婦女身(ばらもんぶにょしん)
- 童男身(どうなんしん)-持蓮(じれん)観音
- 童女身(どうにょしん)-持蓮(じれん)観音
- 天身(てんしん)-龍頭(りゅうず)観音
- 龍身(りゅうしん)-龍頭(りゅうず)観音
- 夜叉身(やしゃしん)-龍頭(りゅうず)観音
- 乾闥婆身(けんだっぱしん)
- 阿修羅身(あしゅらしん)
- 迦楼羅身(かるらしん)
- 緊那羅身(きんならしん)
- 摩睺羅伽身(まごらがしん)
- 執金剛身(しゅうこんごうしん)-不二(ふに)観音
六観音とは
六道に迷える民衆を救うために現れた六体の観音のこと。
六道と観音菩薩との関係は
七観音とは
民衆を教化し導くために変身した姿で、七福神のように揃うことで有難さが増しています。
- 聖観音
- 十一面観音
- 千手観音
- 馬頭観音
- 如意輪観音
- 准胝観音
- 不空羂索観音
三十三観音とは
観音菩薩が民衆を救済するために変身した三十三の姿のことで、これらの観音が祀られた霊場を巡礼する三十三観音霊場巡りも盛んです。
- 楊柳(ようりゅう)
- 龍頭(りゅうず)
- 持経(じきょう)
- 円光(えんこう)
- 遊戯(ゆげ)
- 白衣(びゃくえ)
- 蓮臥(れんが)
- 滝見(たきみ)
- 施薬(せやく)
- 魚籃(ぎょらん)
- 徳王(とくおう)
- 水月(すいげつ)
- 一葉(いちよう)
- 青頚(しょうけい)
- 威徳(いとく)
- 延命(えんめい)
- 衆宝(しゅうほう)
- 岩戸(いわと)
- 能静(のうじょう)
- 阿耨(あのく)
- 阿摩提(あまだい)
- 葉衣(ようえ)
- 瑠璃(るり)
- 多羅尊(たらそん)
- 蛤蜊(こうり、はまぐり)
- 六時(ろくじ)
- 普悲(ふひ)
- 馬郎婦(めろうふ)
- 合掌(がっしょう)
- 一如(いちにょ)
- 不二(ふに)
- 持蓮(じれん)
- 灑水(しゃすい)
三十三観音霊場巡り
四国の八十八か所巡りと並んで零時様巡りとしてとても人気が高いのが三十三観音霊場巡りです。
日常生活と離れて仏道の修行が出来る空間があって、それを支えている歴史と伝統があることは素晴らしいことです。
様々な目的をもって廻ってみたら新しい発見があるはずです。
今まで見えなかったものが見えてくるかもしれません。
全国に大小様々の三十三観音霊場があって、観音菩薩信仰を担っています。
三十三観音については後世になって作られたと言われていますが、仏教に親しみ、学ぶ良いきっかけになれば、どのような形であっても構わないと思います。
西国三十三観音
西国三十三観音霊場は近畿地方2府4県と岐阜県わ巡る観音菩薩霊場巡りで、我が国で最も歴史の古い霊場巡りです。
- 第一番 青岸渡寺
- 第二番 金剛宝寺
- 第三番 粉河寺
- 第四番 施福寺
- 第五番 葛井寺
- 第六番 南法華寺
- 第七番 岡寺
- 第八番 長谷寺
- 第九番 南円堂
- 第十番 三室戸寺
- 第十一番 上醍醐 准胝堂
- 第十二番 正法寺
- 第十三番 石山寺
- 第十四番 三井寺
- 第十五番 今熊野観音寺
- 第十六番 清水寺
- 第十七番 六波羅蜜寺
- 第十八番 六角堂 頂法寺
- 第十九番 革堂 行願寺
- 第二十番 善峯寺
- 第二十一番 穴太寺
- 第二十二番 総持寺
- 第二十三番 勝尾寺
- 第二十四番 中山寺
- 第二十五番 播州清水寺
- 第二十六番 一乗寺
- 第二十七番 圓教寺
- 第二十八番 成相寺
- 第二十九番 松尾寺
- 第三十番 宝厳寺
- 第三十一番 長命寺
- 第三十二番 観音正寺
- 第三十三番 華厳寺
坂東三十三観音霊場
坂東三十三観音霊場は関東地方の神奈川、埼玉、千葉、群馬、茨城、栃木県にまたがる観音菩薩霊場です。
- 第一番 杉本寺 神奈川県(鎌倉市)
- 第二番 岩殿寺 神奈川県(逗子市)
- 第三番 安養院 神奈川県(鎌倉市)
- 第四番 長谷寺 神奈川県(鎌倉市)
- 第五番 勝福寺 神奈川県(小田原市)
- 第六番 長谷寺 神奈川県(厚木市)
- 第七番 光明寺 神奈川県(平塚市)
- 第八番 星谷寺 神奈川県(座間市)
- 第九番 慈光寺 埼玉県
- 第十番 正法寺 埼玉県
- 第十一番 安楽寺 埼玉県
- 第十二番 慈恩寺 埼玉県
- 第十三番 浅草寺 東京都
- 第十四番 弘明寺 神奈川県(横浜市)
- 第十五番 長谷寺 群馬県
- 第十六番 水澤寺 群馬県
- 第十七番 万願寺 栃木県
- 第十八番 中禅寺 栃木県
- 第十九番 大谷寺 栃木県
- 第二十番 西明寺 栃木県
- 第二十一番 日輪寺 茨城県
- 第二十二番 佐竹寺 茨城県
- 第二十三番 正福寺 茨城県
- 第二十四番 楽法寺 茨城県
- 第二十五番 大御堂 茨城県
- 第二十六番 清瀧寺 茨城県
- 第二十七番 円福寺 千葉県
- 第二十八番 龍正院 千葉県
- 第二十九番 千葉寺 千葉県
- 第三十番 高蔵寺 千葉県
- 第三十一番 笠森寺 千葉県
- 第三十二番 清水寺 千葉県
- 第三十三番 那古寺 千葉県
十三仏として
十三仏とは人の死後33年間までを案内する仏のことで、死後の世界の裁判官として中国で古来より信仰されていた十王の思想が発展したと言われています。
観音菩薩は人の死後百か日を案内する仏になります。
- [十三仏] [裁判官] [法事] [命日から]
- 不動明王 秦広王(しんこうおう) 初七日 7日目、6日後
- 釈迦如来 初江王(しょこうおう) 二七日 14日目、13日後
- 文殊菩薩 宋帝王(そうていおう) 三七日 21日目、20日後
- 普賢菩薩 五官王( ごかんおう) 四七日 28日目、27日後
- 地蔵菩薩 閻魔王 (えんまおう) 五七日 35日目、34日後
- 弥勒菩薩 変成王 (へんじょうおう) 六七日 42日目、41日後
- 薬師如来 泰山王( たいざんおう) 七七日 49日目、48日後
- 観音菩薩 平等王 (びょうどうおう) 百か日 100日目、99日後
- 勢至菩薩 都市王 (としおう) 一周忌 2年目、1年後
- 阿弥陀如来 五道転輪王(ごどうてんりん) 三回忌 3年目、2年後
- 阿閦如来 蓮華王 (れんげおう) 七回忌 7年目、6年後
- 大日如来 祇園王 (ぎおんおう) 十三回忌 13年目、12年後
- 虚空蔵菩薩 法界王( ほうかいおう) 三十三回忌 33年目、32年後
観音菩薩の真言
観音菩薩の真言(聖観音)は「おん あろりきゃ そわか」です。
その他の観音菩薩の真言は
十一面観音の真言
- オン・ロケイ・ジンバ・ラ・キリク・ソワカ
- オン・マカ・キャロニキャ・ソワカ
千手観音の真言
- オン・バザラ・タラマ・キリク
如意輪観音の真言
- オン・ハンドメイ・シンダ・マニ・ジンバ・ラ・ウン
准胝観音の真言
- オン・シャレイ・ソレイ・ソンデイ・ソワカ
不空羂索観音の真言
- オン・アボキャ・ビジャシャ・ウン・ハッタ
- オン・ハンドマダラ・アボキャ・ジャヤデイ・ソロソロ・ソワカ
- オン・アモキャ・ハラチカタ・ウンウン・ハッタ・ソワカ
馬頭観音の真言
- オン・アミリト・ドハンバ・ウン・ハッタ
白衣観音の真言
- オン・シベイテイ・シベイテイ・ハンダラ・バシニ・ソワカ
楊柳観音の真言
オン・バザラダラマ・ベイサジャ・ラジャヤ・ソワカ
六字大明呪
- オム・マ・ニ・ペ・メ・フム
- オーム・マニ・ペーメエ・フーム
補陀落浄土
補陀落(ふだらく)浄土とはサンスクリット語でポータラカ (Potalaka) の音訳であり、遥か南の観音菩薩の浄土の事です。
補陀落信仰とは
海の向こう、太陽の沈む水平線の遥か向こうには観音菩薩の浄土があって、そこに行けば夢のような浄土の生活を永遠に満喫することが出来るという信仰が補陀落信仰です。
補陀落渡海とは
観音菩薩の浄土である補陀落浄土にある補陀落山は、観音菩薩が降り立つとされる伝説上の山であり、海の遥か向こうにあるという言い伝えから、我が国では中世になって補陀落浄土を目指して船に乗って渡海するという補陀落渡海がさかんに行われて時期がありました。
補陀落の地としては熊野や日光が有名ですが、和歌山県の熊野の海岸から補陀落浄土を目指してわずかな食糧と水を携えて小さな帆掛け船に乗り、外に出られないように外から閉じてもらってから出港するという、決して帰ることの無い補陀落渡海で旅立った人が数多く居ます。